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【9】-4 妊娠にふさわしい体格・体重増加 ③ 「ゆるやかな指導」が趨勢

新生児の出生体重はこの20年間減少の一途をたどってきました。

このことは、すべての妊娠女性において妊娠中の体重増加量が減少していることと関係があるはずです。

日本では、過去の妊婦健診指導で、かなりストイックに妊婦さんの体重管理が行われてきた経緯があります。

妊娠中の体重増加と妊娠高血圧腎症(かつての妊娠中毒症)との関連が強調されていたためです。

妊娠中の体重増加量が多すぎると、妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症を含む概念)の発症率が上がることは事実です。

しかし、妊娠中の体重増加量が少なすぎても、妊娠高血圧症候群の発症率が上がるのです。

妊娠中の体重増加を抑制しても、妊娠高血圧症候群を予防できない、といわれています。

現在、妊娠高血圧腎症のリスク因子としてはっきりしているのは、母体が高年齢であることと、腎疾患の既往があることです。

すべての妊婦さんに、ストイックに妊娠中の体重管理をすることはナンセンスです。

意味がないどころか、妊娠中の体重増加不良が子宮内の低栄養を招くことを考えれば、有害とすらいえます。

実際の臨床の場では、妊娠中の母体の体重増加に関して、さまざまな方針の産婦人科があることでしょう。

しかし、妊婦さんの妊娠中の体重管理に関して「ゆるやかな指導」を行うことが現在の流れです。

海外では、妊娠に伴う体重増加の上限を、特に設けていない医療圏もあるほどです。

母親に、妊娠に伴う負担を背負うだけの余力が十分あれば、本来は体重が多少増えすぎても問題ないのでしょう。

【9】-3 Barker仮説とDOHaD ⑲ 生活習慣病の一次予防

妊娠する前から、ひいては妊娠するまでの女性の全人生の栄養状態が良好であればあるほど、身ごもる子どもの将来は明るくなります。

ここは先進国で、物質的にはその条件を十分満たしうるところです。

妊娠する前までの女性の人生に「やせ」がないこと。

妊娠する前から妊娠中にかけて、多彩でバランスの良い食生活が送れること。

これでその女性は、将来身ごもる子どもに健康な一生を、さらには次の世代の健康までもプレゼントできます。

これは、母親が子どもにしてあげられる最高のプレゼントのひとつです。

妊娠前から妊娠中にかけて母親となる女性の栄養状態を良好に保つことは、生活習慣病の究極の一次予防になります。

妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症を除くと、先進国で母親が栄養状態を良好に保てない代表的な疾患に摂食障害があります。

摂食障害は女性に多い病気です。

女性の思春期頃から発症し、その後の慢性化も少なくありません。

摂食障害となることで、栄養状態が不良となり、それはその女性の卵子にも大きな影響を及ぼすでしょう。

摂食障害は一旦回復しても、容易に症状が再発することでも知られています。

摂食障害の再発率の高さは、根本的な治療が成されていないことを示しています。

高い医療水準を誇る日本の医療現場でさえ、根本的な治療法が分かっていない病気なのです。

日本では少子高齢化が進んでいます。

少数精鋭となるべき次世代の健康を守るためにも、摂食障害の根本的な治療が必要です。

【9】-3 Barker仮説とDOHaD ⑱ 子どもの将来・・の前に その2

「やせ」の状態で妊娠することは、母親にとっても子どもにとっても多くの危険をはらみます。

子どもにとっての危険についてまとめてみます。

母親の妊娠前からの「やせ」は、常位胎盤早期剝離のリスクを上げるという報告があります。

これについては、【9】-2 常位胎盤早期剝離の項で詳しく書きました。

母親が常位胎盤早期剝離を合併すると、子どもがお腹の中で死んでしまったり、生まれてきても脳性まひなどの後遺症が残ることがあります。

また、切迫早産・早産になりやすく、子どもが未熟児(早期産児)として生まれる危険があります。

未熟児として生まれると、新生児仮死という全く元気のない状態で生まれたり、呼吸障害を起こすリスクがあります。

早産の程度によっては、集中的な新生児医療を受ける必要があるでしょう。

次に、子どもが低出生体重児として生まれる危険があります。

子どもが小さく生まれることで、呼吸障害・低血糖など合併しやすく、集中的な新生児医療が必要となることがあります。

母親がやせた状態で妊娠すると、胎児期・新生児期にも、子どもにさまざまな危険が生じうるのです。