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【13】-6 摂食障害医療 早急に解決すべき問題

一方で、早急に改善されるべきは、摂食障害医療の混沌が治療離れを促進していることです。

摂食障害の患者さんの多くが治療する側に期待することは、なるべく早く、リバウンドなく、過食、過食嘔吐、チューイング症状を無くすことです。

医院、クリニック、病院などの医療機関に行き、摂食障害、過食症の症状が苦もなくピタリと止まり、その後再発しなければ、大勢の患者さんが喜んで医療機関を受診するでしょう。

ところが、摂食障害、過食症専門の病院、クリニックでの治療、カウンセリング相談などでは、過食、過食嘔吐、チューイング症状を、楽に、いち早く止めることを第一の目的とした治療を展開していません。

その上、摂食障害、過食症に適した治療を受けられる治療機関は、日本ではまだ少ないようです。

症状軽減を目的として、抗うつ剤などを使用することもあるようですが、効果のほどははっきりしていません。

抗うつ剤、抗精神病薬、抗不安薬など精神科系薬物の使用は、気持ちが楽になったり眠れるようになるなど役立つ面もありますが、長期使用の弊害が懸念され、それこそ薬の副作用である処方薬依存の問題もあります。

依存症の性質を強く持つ摂食障害、過食症に対して、脳に効く精神科系の薬物を使用することは、危険も伴うため、本来は、よほど熟達した医師のさじ加減が必要なのです。

病院、医院、クリニックなど、医療機関が提供できるものと、摂食障害、過食症の患者さんが最も望むことの食い違いが、摂食障害医療の混沌を生み、それが摂食障害、過食症の治療離れにも影響しているでしょう。

また、摂食障害、過食症の治療に携わるとき、治療者は、常にアレキサイミアの関与について注意を払うべきでしょう。

摂食障害、過食症の患者さんの多くは、医療従事者を含む他者とのコミュニケーションに困難を抱えています。

そこにアレキシサイミアが加わり、その関与が治療者の念頭に無ければ、双方の行き違いは、またたく間に深刻なものとなりえます。

摂食障害、過食症が治療に結びつきにくく、治療離れを起こしやすいのは、依存症としての病態を考えれば、避けられないことです。

しかし、摂食障害を治そうとする医療従事者が治療離れを促進する事態は避けなければなりません。

【13】-5 治療者が取り組み続けるべき大きな問題 病態としての「病識の欠如」

病気の当事者である自覚が持てない、いかに深刻な病気かが分からない状態は、最も治療から遠い状態にあります。

病識の欠如、病気の深刻さの認識の持続的欠如は、摂食障害の慢性化・遷延化のリスク因子です。

摂食障害、過食症の患者さんは、経年増加をすでに経験していても、そのこと自体に実感が持てなかったり、これから先は、症状が増えるという気がしなかったり、病状が悪化することが十分に理解できません。

これは、すでに摂食障害、過食症が慢性・遷延化してしまっているか、そのうち慢性・遷延化する方に典型的な状態です。

病気である実感を持てないこと、病気の大変さが分からないことが、摂食障害、過食症の症候であるならば、患者さんはそのことで責められるべきではありません。

かぜで発熱することが責められるべき問題ではないように、病気の症状は、対処が必要となりうるものであって、非難される類のものではないからです。

患者さんにできることがあるとすれば、それはまず、摂食障害、過食症という病気であるからこそ、病気である実感を持てない、病気の大変さが分からない状態に陥りやすい、と知ることです。

 
摂食障害、過食症の方に見られる病識の乏しさは、治療につながりにくく、また、治療離れを促進するものです。

医療機関・治療機関を受診する摂食障害、過食症の患者さんは、おそらく少数派です。

なにしろ、摂食障害、過食症には、自分自身を病気と露ほども思っていない、潜在的な患者さんが大勢いるからです。

治療を望む少数派ですら、期待した効果が得られないことや、医療従事者の対応に失望するなどで、治療から離れ、二度と医療機関に行かなかったりします。

摂食障害、過食症の病態として治療に結びつきにくいことは、難しい問題で、すぐにどうこうできるものではありません。

これは、現在の日本の摂食障害医療では、太刀打ちできていない問題でもあるでしょう。

しかし、これからの摂食障害医療を担う医療従事者、治療者、専門家は、病識の欠如という症候に立ち向かい続け、時間がかかったとしても解決の道を模索し続けなければなりません。

【13】-3 摂食障害、過食症に見られる心理的特徴 アレキシサイミア ② アレキシサイミアは摂食障害、過食症の病状を悪化させる

アレキシサイミアは、危惧すべき状態です。

摂食障害、過食症の方は、過食、過食嘔吐、チューイング症状に自分の生活を奪われていることが、嫌で、つらくてたまらない、と本当は思っていても、全くそのように感じていない場合もあります。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用による悪影響で、心も身体も崩壊寸前だったとしても、本人だけがそのことに気付けません。

摂食障害、過食症に見られるアレキシサイミアは、病気の状態の苦しさを覆い隠し、病気の大変さを分からなくしてしまいます。

過食衝動に煩わされない状態で症状が止まってから、ようやく、自分がもう二度と戻れないと思うような苦しい状況にいたことに気付くケースは、多々あります。

一旦平静な状態になると、以前は「普通」と思っていた自分の状況を、「地獄」のように感じる方までいます。

アレキシサイミアは、摂食障害、過食症の病識の欠如、病気の深刻さの持続的欠如の悪化因子です。

医師、医療従事者にとって、問診や患者さんの訴えを聞くことは、診断・治療のためにも非常に重要なことです。

ところが、摂食障害の患者さんにアレキシサイミアがある場合、患者さんの心の底にある真のつらさや訴えを、患者さん自身が言葉にできないので、医師に伝えることができません。

そのために、患者さんと医師の間にすれ違いが生じやすく、そのすれ違いが治療離れという結果をまねきやすくなります。

摂食障害医療に携わる医療従事者、専門家、治療者は、アレキシサイミアの関与を念頭に置いて診療に当たるべきでしょう。