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【1】-5 摂食障害と癌

過食嘔吐を繰り返しながらも、食道がんが心配で眠れぬ夜を過ごし、その不安を打ち消すように過食嘔吐することがありました。

摂食障害には、消化器系の癌のリスクがあります。
舌がんなどの咽頭がん、食道がんは化学的・機械的刺激や慢性的な炎症が癌の発生に関わっていると考えられます。
摂食障害で過食や過食嘔吐、チューイングする人は、摂食障害の無い人に比べると、何十倍~何百倍も、噛んでいますし、吐きだしていますし、嚥下していますし、嘔吐しています。
口腔~咽喉頭~食道~胃にかけての機械的刺激が非常に多いということです。
また、嘔吐による胃酸で口腔や咽喉頭、食道に炎症が起きるなど、慢性的な炎症も起こりやすい状況にあります。
これら消化器系の酷使は、消化器系の癌のリスクになります。

また、嘔吐時には喉頭上部にも機械的刺激が加わります。
喉頭上部に胃酸による化学的炎症が及ぶ可能性があります。
過食嘔吐によって、呼吸器系の癌に分類される上部喉頭がんのリスクも高くなると思われます。

摂食障害の症状としての嘔吐行為を認める方の場合を考えます。
嘔吐による食道の酷使という面からも食道がんのリスクが高いと考えられます。
それに加え、逆流性食道炎に伴うバレット食道という変化が食道腺癌の下地となります。
つまり、嘔吐するタイプの摂食障害の方に食道がんを発症するリスクはより高いということです。

摂食障害を患っている人の中にはタバコ、アルコール愛用者が多いようです。
タバコ、アルコールの過剰摂取も咽頭がん、喉頭がん、食道がんのリスクとなります。

アルコール常用によりすでに慢性膵炎を合併している人の場合、膵臓がんのリスクもあります。

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【1】-3 過食や過食嘔吐と腹痛 その3

消化管ではありませんが、消化・吸収に深く関係する膵臓という臓器があります。
膵臓は、蛋白や脂肪を分解する消化酵素の分泌(膵液)を行います。

また膵臓は血糖を下げる唯一のホルモンであるインスリンの分泌を行っています。
膵液には蛋白分解酵素が含まれますが、たんぱく質である膵臓が溶けて消化されることはありません。
膵液は、膵臓では蛋白を分解する一歩手前の状態にとどめられるからです。
膵臓と消化吸収を盛んに行う上部の小腸(十二指腸)は一部で接しています。
膵臓で作られた膵液はそこから小腸に分泌されます。
小腸液と膵液が交わることで、膵液中の蛋白分解酵素は完全な状態に変化し、消化が始まります。

摂食障害で過食や過食嘔吐を伴う方には、急性膵炎を起こすリスクがあります。
過食によって、ダンピング症候群が起こると小腸内の水分が増えて小腸内腔の圧があがります。
また、嘔吐を繰り返して小腸液が胃に逆流したりすると小腸内腔の圧のバランスが崩れます。
これらのことが起こると、活性化された蛋白分解酵素を含む膵液が膵臓に逆流することがあります。
活性化された膵液が膵臓に逆流すると膵臓の自己消化が起こります。
これが急性膵炎です。

膵炎になると、腹痛や吐き気を伴う嘔吐などの症状がでます。
また、膵臓は背中に近い臓器なので背中が痛くなることもあります。
嘔吐行為を繰り返している方の中には背部痛に身に覚えのある方がいるのではないでしょうか。
私は身に覚えがあります。

急性膵炎には重篤な全身性合併症を発症する危険があります。
激しい腹痛・背部痛があるときは医療機関を受診をお勧めします。
医療機関を受診する際には、過食・嘔吐行為や摂食障害について医療従事者に知らせた方がよいでしょう。
この情報提供が、重篤な身体疾患の早期発見に役立つこともあるでしょう。
しかし、摂食障害にはびこる誤解や偏見によって患者さんが自らの症状を隠してしまうことが多いと思います。
医療従事者はアルコール性ではない急性膵炎を診たときに過食嘔吐や摂食障害の関与を疑う必要があると思います。

摂食障害にアルコール依存症を合併することもあります。
アルコールによって急性膵炎が引き起こされることもあります。
また、アルコールを常用することで慢性膵炎となることがあります。
慢性膵炎がベースにある上での過食や過食嘔吐によって、身体的な危機がより増します。
上述した機序で急性膵炎様の病態が引き起こされやすく、慢性膵炎の急性増悪を来す可能性があるからです。