摂食障害のホームページ

タグ : 便秘

【18】-6 便秘、むくみへとつながる「しくみ」

 過食と食事制限の繰り返しの悪循環によって、慢性的な便秘、からだがとてもむくみやすくなる、などの不都合もあります。

 過食の翌日にまぶたが腫れぼったくなり、顔がまるく大きく見えたり、足が太くなる、などからだに起こる変化は、その過食で一気に太ったからでありません。むしろ、過食の前にからだに食べ物・水分が充分行き渡っていないために、からだが貯めこみモードになっていて、その反動で過食の後にひどくむくむのです。過食をしたら顔がパンパンになって、それが嫌でその後よけいに食事を摂らない、というパターンは過食症によくあるパターンですが、結局次の過食の後に、よけいひどくむくむ結果につながるだけなのです。

 からだが貯めこみモードになっていると、便秘にもなります。その上、過食それ自体がからだのリズムをめちゃくちゃにし、自律神経のバランスを崩すので、便秘の原因となります。過食と食事制限はいずれも便秘の原因になるもので、それを繰り返していれば慢性的に便秘、ということは充分ありうることでしょう。

 過食後に下痢することもありますが、これは過食のせいで起こる消化管ホルモンの分泌異常によると思われ、これはこれでからだにダメージが加わっている状態です。

 節食傾向が強ければ強いほど、むくみも便秘もひどくなるでしょう。

【18】-2 過食と食事制限をくり返すことで引き起こされる病気の数々

 過食と食事制限のくり返しによって引き起こされうる病気には、以下のようなものがあります。
① 糖尿病、高血圧、高脂血症、内臓脂肪型肥満など生活習慣病・メタボリック症候群。
② 生理不順(稀発月経、無月経)、不妊などの婦人科疾患、流産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症。
③ 致死性不整脈や急性胃拡張などによる突然死。
④ その他、便秘、むくみ。

【17】-7 医療者が見つけるべき妊娠女性に特有の摂食障害・過食症・拒食症のサイン

妊娠前から「やせ」体型であったり、「肥満」体型である場合、摂食障害・過食症・拒食症の関与があるかもしれません。

いままでに極端にやせたことがあるかどうかなど、病歴聴取も重要です。

病院・医療機関に罹ったことがなくとも、「拒食症みたいな」状態になったことがある、「拒食っぽい」時期があった、という女性は案外多いかもしれません。

神経性やせ症、拒食症の回復後であっても、妊娠出産に及んだ時、おなかの赤ちゃんに低出生体重が多い、という研究結果があります。

これは、母体の過去のやせ、低体重によって、その方の卵子が悪影響を受けた結果である、と考えることもできます。

妊娠時、標準的な体格をしている女性でも、過去のやせの経験について確認しておくことは重要なことです。

また、妊娠中の体重増加のパターンが、ふつうから逸脱している場合も、 摂食障害・過食症・拒食症の可能性があるでしょう。

つまり、妊娠中なのに体重が増えない、増えすぎる、増え方のパターンがおかしい、などです。

飢えのない恵まれた環境で、目立った病気や妊娠合併症が無いのに、妊娠中も体重をうまく増やすことができていない妊婦さんは、摂食障害・過食症・拒食症と思われます。

摂食障害・過食症・拒食症であれば、妊娠しているときに、自分にとってもおなかの赤ちゃんにとっても、適切な体重増加がいかに重要なのかを知っていても、肥満恐怖ややせ衝動の影響で、うまく体重が増やせません。

しかも、肥満恐怖、やせ衝動をそれと意識できていない方も多く、本人としてはなんだか良く分からないけど増やせない、程度の認識のこともあります。

過食のスイッチが入るのを恐れ、食事をセーブしすぎて体重を増やせない場合もあるでしょう。

その逆に、過食が止められず、妊娠にふさわしくないほどに体重が増えすぎてしまうこともあるでしょう。

妊娠中の体重の増え方のパターンに、摂食障害としての特徴が表れる場合もあります。

ふつうの妊娠では、妊娠初期はゆるやかに体重が増え、中期ころからおなかの赤ちゃんの成長も活発になるため、それに合わせてより一層増える、という増え方になります。

母体がそういったなめらかな体重増加になっていない場合、そこに摂食障害・過食症・拒食症の関与があるかもしれません。

母親が摂食障害、過食症、拒食症であれば、妊娠中の体重の増え方のパターンは滑らかな曲線ではなく、ガタガタとしていて、妊娠時期にそぐわない不自然なパターンとなるでしょう。

たとえば、妊娠初期に過食衝動が爆発し、急激に体重が増えて、その後、肥満恐怖、やせ衝動が強くなり、全く体重を増やせなくなるなど、妊娠全経過でみればちゃんと体重が増えていたとしても、正常とは逸脱した形の、不自然な体重の変化となる場合があります。

妊娠時、貧血が重い場合に、母親が過食嘔吐していたり、下剤・便秘薬を常用、乱用している可能性があります。

過食嘔吐がある場合、食道炎の合併はほどんど必発で、そこからの出血の影響で失血性の貧血、鉄欠乏性貧血となりやすいでしょう。

また、便秘薬や下剤を常用していたり規定量以上に用いている場合、それによって腸が痛み、少しずつ出血していることがあり、下血による貧血を伴うことがあります。

つわりは妊娠初期にみられる妊娠合併症ですが、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠ではつわりが重くなりやすいことも知られており、重症妊娠悪阻では、摂食障害・過食症・拒食症の合併を疑う必要があります。

妊娠中にも関わらず、母体が下剤や便秘薬を規定量以上に使っていたり、利尿剤を使っている場合、たんぱく尿が出ることがあります。

下剤・便秘薬や利尿剤を使うと身体からカリウムという重要なミネラル成分が失われ、低カリウム血症に陥ることがあります。

低カリウム血症によって腎臓の尿細管という部分がダメージを受けると、たんぱく尿が出る、というわけです。

妊婦さんにたんぱく尿が出た時、その方の血清カリウムが低いのであれば、規定量以上の便秘薬・下剤の使用、利尿剤の使用があるかもしれません。

たんぱく尿や高血圧は妊娠高血圧症候群という妊娠合併症が心配されるサインでもあります。

摂食障害合併妊娠には妊娠高血圧症候群を合併しやすいことも分かっています。

また、過食や過食嘔吐によって血糖のコントロールが乱れるため、摂食障害・過食症の方は、2型糖尿病や、インスリン抵抗性をベースとしたさまざまな疾患に罹りやすくなることが予測されます。

インスリン抵抗性の高い母親は妊娠糖尿病になりやすく、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、妊娠糖尿病を合併しやすいでしょう。

妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの妊娠合併症では、妊婦さんに摂食障害・過食症・拒食症(過食・排出型)の合併がありうるでしょう。

医療者側の心構えとして、特に重要になるのは、妊婦さんの摂食障害・過食症・拒食症を「暴く」のではなく、摂食障害を抱えた妊婦さんを可能な限りサポートする、という姿勢です。

母親が摂食障害・過食症・拒食症を患っているのであれば、おなかの赤ちゃんに良くないと分かっていても、過食・過食嘔吐・ チューイング・下剤や利尿剤の誤用を自分では止められませんし、コントロールできないものなのです。

時には吐くために赤ちゃんのいるおなかをギュウギュウ押してしまうこともあります。

産科医や周りの医療者に黙って、便秘薬・下剤、利尿剤を使ってしまう場合もあります。

慢性腎疾患の方が血尿やたんぱく尿を自分ではコントロールできないのと同様に、摂食障害・過食症の方には、過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の誤用をコントロールすることができません。

そして、摂食障害・過食症・拒食症の恐ろしいところは、テキトウな理由でごまかして、当事者にもよく分らないまま、妊娠しているのに、うまく体重が増やせなかったり、どうしても吐いてしまう、下剤や利尿剤を使ってしまう、というところにあります。

病識に乏しいという病気としての特徴があり、やせ衝動、肥満恐怖、過食のスイッチが入るのが怖い、など、摂食障害に特徴的な症状、感じ方を、はっきり自覚できていない方も多いのです。

なぜ自分がこんなことになっているのかよく分らないまま、自分を責めることしかできず、 どんどん深みにはまっていくのが摂食障害・過食症・拒食症なのです。

おなかの赤ちゃんにとっても、母体である自分自身にとっても、いかに過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の使用が危険なのかを理解していても、やめらなれない・とまらないのが摂食障害、過食症、過食嘔吐の病気の恐ろしさであり、病気たるゆえんです。

本来、摂食障害・過食症・拒食症を抱え、病気の状態で妊娠する前に、まず摂食障害を治すのが先です。

しかし、現実には、妊娠中に摂食障害・過食症・拒食症を発症する方もいますし、自分が病気だとは思わずに妊娠に至る方もいることでしょう。

そうしたとき、医療者としてできることは、摂食障害・過食症・拒食症などの病気を疑い、その可能性を考慮に入れながら患者さんを診療して行くことです。

診断後に何ができるかは、精神科医、カウンセラー、産科医、助産師、内科医、小児科医、保健士など、役割によって異なるでしょうが、それぞれの連携も必要になってきます。

産科の医師としてできることは、まず、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠が、決してカンタンなものではなく、数々の危険を孕むハイリスク妊娠である、と正しく認識することでしょう。

そして、妊娠という変化が加わったときの摂食障害・過食症・拒食症らしい症状について知り、数々のリスクが具体的にどういった妊娠合併症と結びついているのかを知ることです。