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カテゴリ : 【17】摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠

【17】 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠  (1)若い女性の「やせ」の問題と摂食障害・過食症・拒食症

過食・過食嘔吐・チューイング、絶食や節食と過食をくり返す悪循環、下剤や利尿剤のあやまった使用、これらはみな摂食障害・過食症の症状です。

また、やせた状態が、極端な食事制限に根差していたり、ときに過食、やけ食い、ドカ食いしている場合や、ふつうの人であれば考えられないぐらいに頭の中を食べること、食べ物、あるいは「やせること」に占拠されている、食べること、食べ物、やせることの重要度が異常なほどに高い、なども摂食障害・神経性やせ症・拒食症の症状です。

自分なりには症状が無い、治った、と思っていても、日常がどっぷり摂食障害・過食症・拒食症に侵されたままのこともあります。

摂食障害に侵された状態での妊娠は、妊娠を負担する母体にとっても、おなかに宿る赤ちゃんにとっても、非常に危険なことです。

ふつうでも、母体に妊娠前の体型として「やせ」があったり「肥満」がある場合は、妊娠経過に注意が必要になります。

肥満恐怖、やせ衝動の影響でやせている、あるいは、過食衝動、過食の影響で肥満がある場合は、特に注意が必要です。

体型の問題に摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の問題が上乗せされるからです。

「肥満」による問題は先進国に多く見られるものですが、日本では若い女性の「やせ」が社会問題になっています。

世界的な基準で、BMI 18.5未満が「やせ」、BMI 25.0以上が「肥満」とされます。

若い女性は次世代をその身体に宿す、いわば未来の社会にとっての母親たちです。

「やせ」が母体とおなかの赤ちゃんに悪影響を与え得ること、その内容がよく分かると、若い女性の「やせ」に潜む問題が、遠く将来にまで及ぶ社会問題であることが見通せます。

日本では、20代女性の「やせ」の割合が29.0%と著しく高い割合を示し、一方、同年代の女性の「肥満」の割合は7.9%です。

妊娠に最も適した体重・体格はBMI 22前後と、一般的な健康指標と変わりないでしょう。

もし20代女性が妊娠に適した体格を目指すとき、ダイエットする人の割合よりも、体重を増やす必要のある人の方がはるかに多いのです。

若い女性の「やせ」は、母体のみならず、その方が将来身ごもる赤ちゃん、子どもに、大きな影響、残念ながら悪い影響を与えるものです。

もしもの数字ですが、20代の女性が妊娠した時に約3割の赤ちゃんに母体の「やせ」による悪影響が出るであろうことを考えると、29.0%という数値の異常さが分かりやすいかもしれません。

日本で、若い女性にやせすぎの方が多い原因のひとつとして、摂食障害・過食症・拒食症の蔓延が挙げられます。

日本では過食・排出型の神経性やせ症や摂食制限型の神経性やせ症など「やせ」が病気のサインとなるタイプの摂食障害の割合が多いのかもしれません。

摂食障害・過食症・拒食症に特徴的なサインは、当人にとっては自覚することが難しく、そもそも摂食障害は病気の自覚に乏しいという特徴を持っています。

過食の後に数日は水分しか摂らない状態や、極端に食事制限した状態が続き、しばらくしてまたドカ食いしてしまう、というのは摂食障害に見られる典型的な食行動のパターンですが、極端な食事制限をしているという自覚が無かったり、これぐらい普通、と捉えている方も多いようです。

摂食障害・過食症・拒食症には、さまざまな病型、症状があり、単にやせても太ってもいなければ大丈夫とか、吐いていなければ大丈夫、というものではありません。

「がん」と診断された方が、自分では病状がはっきりと分からないように、摂食障害・過食症・拒食症の場合も、病状の程度や回復状況は精神科医、専門家が判断するものなのです。

自己判断でなんとなく治った気になっている、大丈夫な気がしている状態は、非常に危険で、治療から遠ざかっているため病状が悪化している、とまで言えるでしょう。

過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や便秘薬、利尿剤のあやまった使用がある場合は間違いなく摂食障害と言えるでしょうし、患者さん本人もどこかおかしいと感じていることが多いものです。

しかし、そういった方々ですら、「悪いクセ。」、「こんなこと、本気になればやめられる。」「結婚したら、妊娠したら、やめよう。」などと自分を誤魔化し、自分が病気であることを真正面からは受け入れられないものです。

将来こうなったらやめよう、自分が本気になればやめられる、と思っている状態は、依存症に典型的な思考パターンで、そうなっている限り、依存症の底なし沼から抜け出ることは絶対にできません。

そのような状態で妊娠してしまったとき、もっとも被害を被ることになるのは、母体となる自身の心と身体に加え、おなかの赤ちゃんです。

摂食障害・過食症・拒食症の状態での妊娠は、流産、早産になりやすったり、妊娠高血圧症候群という妊娠合併症になりやすかったり、おなかの中で赤ちゃんの成長が遅れる(子宮内胎児発育不全)ことが多いなど、さまざまなトラブルがつきまといます。

過去に拒食に陥り、身体が極端に痩せたことのある場合も、妊娠経過に注意が必要です。

卵子はその方が母親の子宮にいる時から卵巣に備わっており、胎児のころから運命をともにしています。

「やせ」の時期の低栄養による悪影響は、身体に確実に降り積もっているものですが、その悪影響は卵子にも及ぶでしょう。

つまり、その卵子を片割れとする、将来の子どもに悪影響が及ぶということです。

また、妊娠やつわり、育児疲れなどから、摂食障害が再発、悪化する可能性もあります。

病識に乏しいのは摂食障害・過食症・拒食症の特徴でもあり、妊娠をきっかけとして摂食障害と診断された方の中には、本人も気づかぬうちにすでに発症していたり、自己判断で治ったと思っていただけ、というケースも多いでしょう。

母体となる身体と将来身ごもる赤ちゃんのことを思えば、妊娠する前、思春期、もっと言えば幼少期のころから健康的で標準的な体格でいることが理想です。

幸いなことに、日本はそれを実現できる物的資源に豊富です。

ところが、その日本で若い女性のやせの比率が異常に高い、というのは、なんという皮肉でしょうか。

【17】-2 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は危険なハイリスク妊娠

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤や利尿剤のあやまった使用、過度な食事制限とその後のドカ食いや過食、これらは摂食障害という病気の症状です。

摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は、妊娠や出産のときにさまざまな問題を抱えることが多く、ハイリスク妊娠と言われています。

しかし、摂食障害に対しての世間の認識は、誤ったものも多く、なかには精神科医、カウンセラーなどの医療従事者、専門家を名乗る方々の中にあっても、摂食障害・過食症・拒食症への理解がほとんど無かったり、認識がズレていたりすることもあるようです。

病気に対する理解・認識が、専門家のあいだですら、このようにあやふやだからでしょうか、摂食障害の患者さんが妊娠するということのリスクについて、ハイリスク妊娠を扱う医療従事者、産科の医師や助産師の間でも、よく知られていないようです。

摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、流産や早産になりやすく、妊娠中、母体の高血圧を合併しやすいなど、母体にも大きな影響がでる妊娠合併症になりやすかったり、おなかの赤ちゃんの成長が滞りやすく、おなかの赤ちゃんが生まれた時に元気が無かったり、体重が少なすぎたり、頭のサイズが小さい傾向にある、など、母、子、双方にさまざまで、時に深刻な問題が見られます。

摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、
摂食障害という病気に対する理解のある精神科医、カウンセラーなどの専門家、
妊娠やお産に関する専門的な知識、身体や心に病気を抱えた状態で妊娠した場合、ハイリスク妊娠を診療することができる産科医や助産師、
摂食障害・過食症・拒食症の身体合併症を診ることができる内科医、救命救急医、
子どもの出生時のトラブルの対応、その後の発達を見守る小児科医など、
複数の診療科に渡る医師、医療従事者の連携、情報の共有が必要になるでしょう。

しかし、そのような充実したバックアップ体制で妊娠、お産に望める方はごく少数でしょう。

お産を終え子育ての段階に入っても、育児疲れから摂食障害・過食症・拒食症が再発したり病状が悪化することもあります。

また、摂食障害の母親は子育てに困難を抱えることが多く、誰にも相談できず、さまざまなストレスに曝され、耐えているうちに、愛しているはずの子どもを虐待してしまう、ということも起こり得ます。

本来なら、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠を乗り越え、お産に至った後にも、母親と子ども、双方をきめ細やかにサポートしていく体制が必要です。

それまで健康に過ごしていてすら、妊娠時期に特有の病気(妊娠合併症)を発症する方もいるほど、「妊娠」という変化は女性にとって大きく、それが人生の転機ともなります。

健康な母体であっても、妊娠、出産に際して、ときに命がけの事態に陥ることもあるのです。

本来、摂食障害・過食症・拒食症という大変な病気を抱えて妊娠し、ましてや過食や過食嘔吐など、なんらかの摂食障害の症状を抱えた状態で、妊娠経過に一切問題が無い、というほうがおかしいのです。

妊娠をきっかけに症状が再発してしまったり、妊娠中も症状が止められない、という事態は摂食障害であれば当然ありうることで、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、妊娠経過、お産を見守るための専門的なバックアップ体制、その後も継続的に母子を見守るサポートが必要です。

医療従事者や専門家の間であってすら病気の認識が定まらず、あやふやであること、
摂食障害・過食症・拒食症という病気の世間的な負のイメージ、
ときには精神科医ですら、その世間的な負のイメージをそのまま摂食障害という病気に当てはめている、世間でも医療界でも見られる混乱、
これが摂食障害の医療の現状です。

このような状況では、妊娠にまつわるさまざまなトラブルに対応する産科医でも、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠について適切に診療することはおろか、摂食障害について正しく把握することすらできないでしょう。

このような医療の混乱の中では、自身の過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤のあやまった使用について、患者さんから医療者に告白することは、とても難しいことです。

まして、妊娠という大きな変化の真っ最中にあり、妊娠しても止められない過食・過食嘔吐・チューイングに加え、おなかの赤ちゃんへの罪悪感や自己嫌悪を抱えた患者さんが、どうして自身の状況を正直に医療者に話せるでしょう。

妊娠経過になんらかの異常があった場合、よけいに患者さんからは過食や過食嘔吐について告白しづらくなるでしょうし、もし、それでおなかの赤ちゃんを失っていたとしたら、大きすぎるショックから口を閉ざす方も多いでしょう。

医療従事者などの専門家を含め、周囲の人々が妊婦さんの摂食障害・過食症・拒食症のサインを見逃してしまい、適切なサポートを受けられず、苦しんでいる摂食障害の母親達、その子ども達を、これ以上増やしてはいけません。

摂食障害・過食食・拒食症の患者さんが症状を医療者、専門家に告白しづらい状況、
摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠を見守り、安全にお産を終えられるよう見守るためのバックアップ体制がほとんど無い状況、
摂食障害の理解が薄い産科医などの医療者が、妊婦さんの摂食障害のサインを見逃してしまう状況、
このような状況で、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の全容など分かるはずがありません。

摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は妊娠中からお産に至るまで、さまざまなトラブルを抱えやすいハイリスク妊娠です。

摂食障害に対する理解が進み、患者さんと医療者との信頼関係ができ、患者さんが周囲のサポートを今よりも気楽に受けられるようになれば、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の全容が徐々に明らかになるでしょう。

そして、現在の認識以上に摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の危険性は高く、細心の注意が必要であることが分かってくるでしょう。

【17】-3 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠 早産、流産との関係

摂食障害に合併しやすい妊娠合併症がいくつかあります。

なかでも、おなかの赤ちゃんに大きな影響が出るのが、流産、早産です。

妊娠の早い時期に赤ちゃんが亡くなってしまうのが流産です。

妊娠中期以後で、予定日より早く赤ちゃんが生まれてしまうのが、早産です。

切迫流産・早産は、流産あるいは早産になりかかった状態にあるものの、なんとか妊娠を維持している状態です。

妊娠22週など早すぎる早産では、赤ちゃんが亡くなってしまう場合もあります。

早すぎる早産の原因として、母親の妊娠高血圧症候群という妊娠合併症があります。

妊娠高血圧症候群は、母親に脳出血などの重い合併症を起こすこともあります。

妊娠高血圧症候群をベースとして、命に関わるような合併症を起こした場合、母体の命を救うため、おなかの赤ちゃんにとってどんなに時期尚早でも、妊娠を終了させなくてはいけません。

摂食障害の妊婦さんは妊娠高血圧症候群を合併しやすいことが知られており、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は早すぎる早産の原因ともなりうるわけです。

摂食障害はなにかとストレスの多い病気ですが、流産、早産は母体のストレスと深く関係しています。

摂食障害・過食症・拒食症の方は、流産、切迫流産、早産、切迫早産につながるような過大なストレスを抱え込みやすいのです。

日々を普通に過ごすだけでも耐えられないほどのストレスが溜まり、それが過食や過食嘔吐のエネルギーになっている方もいます。

妊娠すると、そこに母体としての身体の変化、環境の変化など変化の波が押し寄せ、さまざまな変化に際してのストレスも加わってきます。

過食衝動があるのに、なんとか我慢して過食や過食嘔吐を止めている場合も、症状に伴う問題は無くとも、その我慢によるストレスは相当なものです。

摂食障害の方にとって、過食衝動があるのに過食や過食嘔吐を我慢する状態というのは、普通の人にとって息をするのを我慢するのと似ていて、とうてい我慢できるはずのないことです。

それを無理やりに我慢したときのストレスは、その影響で流産や早産となったり、身体に大きな不調がでても、なんら不思議ないほどのものなのです。

過食に伴い異常に胃がふくらんだり、過食嘔吐のせいで変に腹圧がかかると、子宮が圧迫されておなかが痛むなど、早産の兆候がでる場合もあるでしょう。

嘔吐する際に、大きくなった子宮を押しながら嘔吐する方もいます。

当然ながら物理的に子宮を圧迫することも早産のリスクとなるでしょう。

また、大きくなった子宮を物理的に圧迫することは、おなかの赤ちゃんにとっての命綱である胎盤を傷つける可能性のある、大変危険な行為です。

摂食障害・過食症・拒食症にみられる肥満恐怖ややせ衝動の影響で、妊娠中にうまく体重が増やせない方もいます。

妊娠の全期間、程度の差はあれ、母親の体重は増え続けている状態がふつう、正常です。

母体の体重が増えるべき時期に、体重が減る、あるいは体重が増えない状態は、母親自身も、おなかの赤ちゃんも低栄養の危機に曝されているということです。

妊娠中の低栄養は早産を助長し、また栄養不足による母親の貧血も早産のリスクです。

栄養不足によっても鉄欠乏性貧血になりますが、鉄欠乏性貧血は、下剤・便秘薬の常用や規定量以上の使用、過食嘔吐でよく見られる身体合併症でもあります。

母体の鉄の不足は、早産の原因になる上に、おなかの赤ちゃんの体重が十分増えない(低出生体重)結果にもつながります。

妊娠前からやせた体型でかつ妊娠中も体重が増やせないと、常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)という恐ろしい妊娠合併症に罹りやすくなり、結果、早産となる場合もあるでしょう。

常位胎盤早期剥離はおなかの赤ちゃんの命ばかりか、母親の命も奪うことのある恐ろしい妊娠合併症です。

摂食障害やなんらかの母親の病気の影響で早産となっても、赤ちゃんは、赤ちゃんを救命するための集中治療室などで専門的な治療を受けることができます。

しかし、壊死性腸炎や脳室内出血など、早産ゆえに命に関わる合併症も多くあり、命が助かっても、脳性まひなどの障害が残る場合もあるでしょう。

また、早産児には、命に関わらずとも、未熟児網膜症など失明にも至ることもある病気や、発達障害・低学歴を合併しやすいなどの問題もあります。

失うところだった命を医療の進歩に伴って救えるようになった現状はすばらしいものですが、母親が摂食障害・過食症・拒食症でなければ起こり得なかった早産、低出生体重出生に関しては、その予防が極めて重要です。

そもそも、
過食嘔吐していなければ・・・
下剤や利尿剤を使っていなければ・・・
やせていなければ、妊娠中にちょうど良い体重増加を果たせていれば・・・など、
なにか起こってから悔やむのでは遅すぎます。

母親が摂食障害・過食症・拒食症に侵されているためにこそ起こる妊娠合併症、おなかの赤ちゃんの早産や低出生体重出生を予防するためには、妊娠よりも先に、母親となる女性が摂食障害・過食症・拒食症を治さなければいけない、ということです。

早産・低出生体重出生では、出生直後から入院中も多くの試練がありますが、それらを無事にくぐりぬけても、子どもの時分から肥満、高血圧、高脂血症や2型糖尿病などのメタボリックシンドロームになりやすいことが知られています。

肥満、高血圧、高脂血症、2型糖尿病などのメタボリックシンドロームを抱え、それらに一生悩まされ続ける、ということを考えると、予防できるものならば、予防したい、それらの苦しみが無い人生を選びたいのが人情、まして子どもにそれが用意できるならば用意してあげたいのが親心でしょう。

母親が摂食障害・過食症・拒食症を治し、症状に悩まされることの無い日常を過ごし、適切な体重で妊娠し、適度に体重が増える安定した妊娠経過を過ごし、満期でお産に至れたのであれば、おなかの赤ちゃんは早産による数多の困難をくぐりぬける必要もなく、将来的な生活習慣病のリスクまで格段に下がった状態で生を受けるでしょう。

母親が、心身ともに健やかに、安らかに妊娠経過を過ごすことで、おなかの子どもに、将来にまで及ぶ健康な身体という最高のプレゼントができるのです。

妊娠を考えるのであれば、その前に、摂食障害・過食症・拒食症の完治を目指すことです。

早すぎる早産は、赤ちゃんを死なせてしまったり、脳性まひや未熟児網膜症による失明など、その後一生抱えなければいけない障害を赤ちゃんに背負わせることもあるでしょう。

あなたの過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤のあやまった使用が原因で、赤ちゃんを失ったしまったら・・・

命が助かっても一生ものの障害をわが子に背負わせてしまうことになったら・・・

自分が妊娠中過食嘔吐してさえいなければ、自分が病気を治してさえいれば、という後悔を抱えながら、子育てや子どもの介護をするのは、とても大変なことでしょう。

摂食障害を治さずに妊娠してしまうと、一生後悔してもしきれない事態が起こる可能性もあるのです。

なかには、その事実を正視できないまま、過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の誤用、その他の依存物質や行為にすがり、ボロボロになりながら命をつないでいる方もいるかもしれません。

(関連記事)
※【9】ー2-②~⑤ 妊娠全経過と摂食障害のカンケイ 妊娠中期~後期 早産・切迫早産 摂食障害とのカンケイ その1~その4

【17】-4 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠 常位胎盤早期剝離との関係

常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)という妊娠合併症があります。

母親もおなかの赤ちゃんも命を落とすことがある非常に恐ろしい病気、妊娠合併症です。

常位胎盤早期剝離とは、赤ちゃんがおなかにいるのに、胎盤が子宮からはがれてしまう病気です。

おなかの赤ちゃんは胎盤を通して、母親から酸素や栄養をもらったり、老廃物を処理してもらっています。

胎盤がはがれて機能しなくなると、おなかの赤ちゃんが酸素をもらえないので窒息状態になり、死んでしまうこともあります。

命が助かっても、低酸素性脳症など脳に障害が残ることもあります。

母親にも、失血、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)の合併による死の危険があります。

播種性血管内凝固症候群とは、胎盤の血だまり成分が母親の血液の均衡を崩して、全身のあらゆる臓器に出血や塞栓(つまり)を起こす病気です。

常位胎盤早期剥離では、最悪、母親とおなかの赤ちゃんの命、両方が失われることもあるのです。

常位胎盤早期剝離の母体死亡率は1~2%、児死亡率は30~50%にも上ります。

命が助かっても、母親にも子供にも後遺症が残ることもあるでしょう。

子どもの脳性まひの発生原因として、常位胎盤早期剝離が占める割合は30%とも言われます。

母親の脳や脊髄などで塞栓や出血が起こってしまった場合、命が助かっても寝たきりとなってしまうかもしれません。

この常位胎盤早期剝離の原因ははっきりとしていません。

しかし、常位胎盤早期剝離を起こしやすいリスク因子はいくつか知られています。

摂食障害・過食症・拒食症の妊婦さんは、これらのリスク因子を複数持っていることが多いのです。

妊娠前の母体がやせていたり、妊娠中にうまく体重をふやせないときに常位胎盤早期剝離が起こりやすくなることが知られています。

妊娠中、体重増加が少なすぎることは、母体にとって危険なのです。

妊娠中の体重増加が多すぎることが良くないことは、広く日本で知られているようですが、少なすぎても良くない、むしろ危ない、ということは、まだまだ知られていないようです。

当然ながら摂食障害を治さずに妊娠すれば妊娠中の体重増加に悩むことになります。

少なすぎも増えすぎもあるでしょう。

おなかの赤ちゃんの成長が滞っている状態を子宮内胎児発育不全(しきゅうないたいじはついくふぜん)と言いますが、この子宮内胎児発育不全という状態も、常位胎盤早期剥離を合併しやすいリスク因子のひとつです。

母体の体重増加がいまいちで、かつ、おなかの赤ちゃんの成長も滞っている状態というのは、母親に摂食障害・過食症・拒食症があれば起こりうることですが、これは常位胎盤早期剝離の危険因子を二つあわせもつということでもあります。

また、おなかを打つなど、外傷によっても、胎盤が物理的なダメージを負うことになれば、常位胎盤早期剝離が起こることもあるでしょう。

妊娠後期には、過食でふくらむ胃が大きくなった子宮を圧迫したり、嘔吐するときにかかる腹圧が大きくなった子宮を圧迫したりするので、過食・過食嘔吐をくり返せばくり返すほど、胎盤を傷つける可能性が高まるでしょう。

過食嘔吐、普通食嘔吐をしている妊婦さんのなかには、大きくなった子宮を手で押して嘔吐をする方もいます。

嘔吐するために大きくなったおなかを部分的に押すことは、胎盤を傷つける可能性のある、大変危険な行為です。

さらに、うつ状態、不安、ストレスなどをもつ妊婦さんで、常位胎盤早期剝離の発症頻度が高いことも知られています。

摂食障害・過食症・拒食症にうつ病を併存することは多く、ふつうでも、マタニティブルーという言葉で代表されるように、妊娠の前後に、母親が抑うつ的になることがあります。

摂食障害・過食症・拒食症を抱えた人生には、抑うつや不安、ストレスが多くつきまといます。

妊娠はときに体質まで変えてしまうことのあるほど、母親の身体に大きな変化を及ぼします。

また、妊娠に伴う人間関係の変化、環境の変化、体型の変化は心にも大きく作用するでしょう。

自覚に薄くとも、妊娠という大きな変化に伴い、摂食障害の妊婦さんが日々受けるストレスは相当なものです。

その上に過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の誤用に振り回されている状態であれば、母体の心身に異常なほどのストレスがかかっていることは間違いありません。

妊娠には向かないほどやせた状態で妊娠する。
妊娠中の体重をうまく増やせない。
おなかの赤ちゃんの成長が滞りやすい。
過食・過食嘔吐・チューイングが止まらない、時には子宮を押してでも嘔吐してしまう。
うつ病を併存することもある。
不安やストレスを抱えやすい。

これらは、摂食障害・過食症・拒食症を抱えて妊娠した場合に、病気の症状として当然ありうる事柄ですが、これらすべてが常位胎盤早期剝離という恐ろしい妊娠合併症につながるリスク因子なのです。

摂食障害を抱えて妊娠するということは、常位胎盤早期剥離を合併する危険が他の妊婦さんよりも格段に高いことを示します。

常位胎盤早期剝離の危険性を考えたとき、摂食障害・過食症・拒食症を治さずに妊娠するということは、危険な賭けにでているのと同じことです。

お母さん自身とおなかの赤ちゃんの命、その後の人生、生活の質をかけた、非常に危険な賭けです。

賭けに負けるということは、母親か子ども、あるいは両方の命が失われることであり、命が助かっても後遺症に苦しむ、ということです。

障害のある子を、母親として全面的にサポートする覚悟が、あなたにありますか。

その覚悟があっても、あなた自身が後遺症に苦しんで、介護やサポートを必要としている場合、子どもを介護できる状態にすらなれないかもしれません。

そうなれば、あなたの愛する旦那さんや家族に全面的に頼るしかないでしょう。

あなたは、恐ろしすぎて、旦那さんにも、家族にも、誰にも言えないかもしれません。

自分が妊娠中過食嘔吐していたこと、おなかを押しても吐いていたこと、そのせいで子どもに影響がでたであろうこと。

辛い気持ちに耐えきれず、過食や過食嘔吐にすがろうとしても、それができない身体になっているかもしれません。

摂食障害・過食症・拒食症を治さずに妊娠してしまうと、一生後悔してもしきれない事態が起こる可能性もあるのです。

【17】-5 便秘薬・下剤や利尿剤が妊娠に与える影響について

妊娠中に下剤・便秘薬、利尿剤などを使っていると、母親自身の身体やおなかの赤ちゃんに悪影響があります。

市販されている下剤・便秘薬の多くは、腸を無理やりにでも動かして排便を促すものです。

この便秘薬の作用が子宮に働いてしまうと、子宮筋を不要に収縮させて流産に至る可能性があります。

下剤・便秘薬を常に使っていたり、規定量以上に使っている場合、特にその危険が大きいでしょう。

また、妊娠中から便秘薬・下剤や利尿剤を使っていると、生まれた赤ちゃんに無呼吸発作という呼吸の障害がでる場合があります。

便秘薬・下剤、利尿剤を使っていることで、母親の血液の中性バランスが崩れ、アルカリ性に傾きます。

生まれた子どもにもその影響が残り、アルカリに傾いた血液のバランスを取るために無呼吸発作が起こります。

赤ちゃんの無呼吸発作は、全身の重要臓器が低酸素に陥ってしまうほど長期間、起こることもあります。

これは、各臓器がまだまだ発達途上の赤ちゃんの身体にとって大打撃です。

脳の発達に悪影響がでる場合もあるでしょう。

たくさん食べてしまったから多めの下剤・便秘薬を飲んで帳消しにしようというのであれば、自分でも気づかぬうちに、あなたは摂食障害・過食症・拒食症を発症している可能性が高いでしょう。

また便秘薬や下剤を規定量以上に飲んでしまう場合、摂食障害の関与はほぼ間違いありません。

再発の問題は摂食障害・過食症・拒食症医療の最大のテーマですが、便秘薬・下剤や利尿剤の使用がある摂食障害・過食症・拒食症の例は病状が重く深刻であることが多く、妊娠を希望するのであれば、完治をお勧めします。

妊娠後期には、大きくなった子宮によって腸が押しつぶされるため、ふつうでも便秘になりやすくなります。

そのような状態で、下剤・便秘薬に頼らなくても大丈夫な状態というのは、並大抵のことではありません。

摂食障害・過食症・拒食症であれば、妊娠中であっても、多くの方がこっそりと、あるいは自己判断で下剤・便秘薬、ときには利尿剤を使ってしまうことでしょう。

または、そういう形で再発してしまうでしょう。

また、摂食障害・過食症・拒食症の方の多くが便秘に悩んでいますが、この病気の方が便秘薬・下剤に一度頼ってしまうと、便秘薬・下剤常用・乱用に至ることが多いのです。

最初は月に数回だったものが、気づけば毎日に、いつのまにか規定量を越えた使用になってしまいます。

便秘薬・下剤の使用は、「これぐらい当たり前。」「これぐらい普通。」から始まり、いつのまにか人目を忍ぶほど、家族にも隠れて使わなくてはいけないぐらいの異常な量に増えていきます。

このようにして、摂食障害は、音も無く忍びより、あなたの人生をがんじがらめにしてしまうものです。

妊娠してもそれを止めることはできません。

おなかの赤ちゃんごとがんじがらめになるだけなのです。

便秘薬・下剤や利尿剤を「なんとなく」使いながら妊娠してしまうのは非常に危険なことです。

過食衝動をなくせば、過食・過食嘔吐・チューイングのみならず、便秘薬・下剤、利尿剤のあやまった使用もやめられるでしょう。

がまんすることなく過食・過食嘔吐・チューイングを止めることは、便秘の改善にも役立ちます。