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カテゴリ : 【13】摂食障害、過食症と病識のカンケイ

【13】-1 摂食障害の症状・徴候における最大の共通項 病識の欠如

摂食障害、過食症の症状、病型は様々です

過食、過食嘔吐、普通食嘔吐、チューブ吐き、チューイング、拒食、摂食制限、過度な食事コントロールなど、食べ物や食べることにまつわる症状だけでも多種多様です。

食べ物にまつわる症状以外にも、過剰な運動、下剤・浣腸・利尿剤など薬物の誤用、瀉血(しゃけつ:自分で自分の血液を抜くこと)など、やせ衝動や排出衝動に根差した症状もあります。

その病型も、神経性やせ症(神経性無食欲症)、神経性大食症(神経性過食症)、過食性障害(むちゃ食い障害)など複数あります。

そんななか、食べ物・食べ方や体重・体型にまつわること以外で、摂食障害、過食症のほとんどすべての方に共通する、非常に特徴的な症候があります。

それは、病気であることの自覚(病識)が低い、あるいは無いこと、そして、病気の深刻さが分からないことです。

専門的に言うと、摂食障害、過食症は、病識が欠如しているか非常に乏しく、病気の深刻さの認識が持続的に欠如した状態です。

病識の欠如に関しては、制限型の神経性やせ症(神経性無食欲症)、拒食症で特に問題視されることが多いかもしれません。

現に、神経性やせ症(神経性無食欲症)の診断基準には、「現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如」という、病識の乏しさを指し示す項目があります。

この診断基準の、「現在の低体重」を、「摂食障害、過食症という病気」と置き換えてみます。

「摂食障害、過食症という病気の深刻さに対する認識の持続的欠如」となります。

これは、拒食症、神経性やせ症に限らず、摂食障害、過食症全体に共通して見られる大きな特徴を表した一文です。

病識の欠如、乏しさ、病気の深刻さの認識の持続的欠如は、摂食障害全般に見られる、最大の共通項とさえ言えるかもしれません。

【13】-2 摂食障害が患者さんから奪うもの ① 病気はさまざまなものを奪う

病気である実感が湧かなかったり、病気の大変さが分からない状態は、摂食障害、過食症に良く見られるものです。

摂食障害、過食症の方は、病気に関することで特に、冷静に状況を見定めることができません。

摂食障害、過食症という病気は、心と身体に多大な悪影響を及ぼすものです。

摂食障害、過食症を放置すると、生きていく上でとても大切なもの、心と身体の健康、温かな人間関係、財産など、多くのものを失っていきます。

適切な判断力、行動力も、病気に侵され、患者さんから奪われ、失われてしまうものです。

過食衝動に襲われ、過食や過食嘔吐、チューイングに溺れた状態は、酒に酔った状態にも似ています。

かりそめの安心感に身を浸した酔っ払いの状態で、どうして、病気の厳しい現実を見据え、最善策を練ることができるでしょう。

また、摂食障害、過食症のなかには、比較的冷静に物事を見極めて、どう行動するのが良いか分かっていても、行動できない方もいます。

摂食障害、過食症を治そうとするとき、患者さん自身の、冷静で客観的な視点、適切な判断力、建設的な行動力は、すべての要素が揃って必要です。

摂食障害、過食症の患者さんは、こと病気に関することで特に、冷静で客観的な視点を失っているか、判断力が鈍っているか、建設的に行動できないか、あるいはその全てを失っているか、いずれかの状態にいます。

吐けばカロリーは無かったことに。でも、その代替は?

【13】-2 摂食障害が患者さんから奪うもの ② どんどん身動きが取れなくなる

過食、過食嘔吐、普通食嘔吐、チューイングなど、明らかな摂食障害の症状があるのに、症状を止めるため、治すために一切行動しない人は、摂食障害、過食症に大勢いますが、それこそが病気の症状のようなものです。

一切行動しないのではなく、多くは自覚の無いままに、病気にからめ取られ、行動できなくなっているのです。

そして、患者さん自身が、摂食障害、過食症について知り、自分を病気と認める努力をしないかぎり、その傾向はますます固着していきます。

残念なことに、依存症の患者さんが病気の恐ろしさに気付いた時、すでに様々なことが手遅れになってしまっていることは少なくありません。

あなたが、過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用をしているのであれば、今が、あなたにとって、最も大きなチャンスのときです。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用など、症状に頼ることで、とにかくあなたは今まで生き延びることができました。

しかし、それと引き換えに、過食、過食嘔吐などの依存にふけるためにこそ、自らの可能性を狭め、選択肢や自由は奪われていったはずです。

今、摂食障害、過食症の傾向について知り、自身を病気と認める努力を始めることが、少ない中にも選べる選択肢が最も多く、不自由な中にも一番自由があるときです。

【13】-3 摂食障害、過食症に見られる心理的特徴 アレキシサイミア ① アレキシサイミアとは

摂食障害、過食症では、アレキシサイミア(失感情症)という心理的特徴を有することがあります。

摂食障害、過食症の患者さんは、特に、悲しい、寂しい、腹が立つ、つらい、苦しいなど、マイナスな気持ちに鈍感で、自分がどう感じているのかよく分からなかったり、なんとなく感じていても言葉にできなかったりします。

これをアレキシサイミア、内的感情の障害といいます。

アレキシサイミアに陥ると、身体の疲れにも気付けなくなるなど、身体感覚も鈍くなることがあります。

摂食障害、過食症で空腹感や満腹感が分からなくなるのは、過食衝動、やせ衝動の影響の他、アレキシサイミアによる身体感覚の障害も関係しているでしょう。

【13】-3 摂食障害、過食症に見られる心理的特徴 アレキシサイミア ② アレキシサイミアは摂食障害、過食症の病状を悪化させる

アレキシサイミアは、危惧すべき状態です。

摂食障害、過食症の方は、過食、過食嘔吐、チューイング症状に自分の生活を奪われていることが、嫌で、つらくてたまらない、と本当は思っていても、全くそのように感じていない場合もあります。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用による悪影響で、心も身体も崩壊寸前だったとしても、本人だけがそのことに気付けません。

摂食障害、過食症に見られるアレキシサイミアは、病気の状態の苦しさを覆い隠し、病気の大変さを分からなくしてしまいます。

過食衝動に煩わされない状態で症状が止まってから、ようやく、自分がもう二度と戻れないと思うような苦しい状況にいたことに気付くケースは、多々あります。

一旦平静な状態になると、以前は「普通」と思っていた自分の状況を、「地獄」のように感じる方までいます。

アレキシサイミアは、摂食障害、過食症の病識の欠如、病気の深刻さの持続的欠如の悪化因子です。

医師、医療従事者にとって、問診や患者さんの訴えを聞くことは、診断・治療のためにも非常に重要なことです。

ところが、摂食障害の患者さんにアレキシサイミアがある場合、患者さんの心の底にある真のつらさや訴えを、患者さん自身が言葉にできないので、医師に伝えることができません。

そのために、患者さんと医師の間にすれ違いが生じやすく、そのすれ違いが治療離れという結果をまねきやすくなります。

摂食障害医療に携わる医療従事者、専門家、治療者は、アレキシサイミアの関与を念頭に置いて診療に当たるべきでしょう。