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カテゴリ : 【17】摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠

【17】-1 若い女性の「やせ」の問題と摂食障害・過食症・拒食症

(1)危険な摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠

過食・過食嘔吐・チューイング、絶食や節食と過食をくり返す悪循環、下剤や利尿剤のあやまった使用、これらはみな摂食障害・過食症の症状です。
また、やせた状態が、極端な食事制限に根差していたり、ときに過食、やけ食い、ドカ食いしている場合や、ふつうの人であれば考えられないぐらいに頭の中を食べること、食べ物、あるいは「やせること」に占拠されている、食べること、食べ物、やせることの重要度が異常なほどに高い、なども摂食障害・神経性やせ症・拒食症の症状です。
自分なりには症状が無い、治った、と思っていても、日常がどっぷり摂食障害・過食症・拒食症に侵されたままのこともあります。
摂食障害に侵された状態での妊娠は、妊娠を負担する母体にとっても、おなかに宿る赤ちゃんにとっても、非常に危険なことです。
ふつうでも、母体に妊娠前の体型として「やせ」があったり「肥満」がある場合は、妊娠経過に注意が必要になります。
肥満恐怖、やせ衝動の影響でやせている、あるいは、過食衝動、過食の影響で肥満がある場合は、特に注意が必要です。
体型の問題に摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の問題が上乗せされるからです。

(2)若い女性の「やせ」は日本の社会問題

「肥満」による問題は先進国に多く見られるものですが、日本では若い女性の「やせ」が社会問題になっています。
世界的な基準で、BMI 18.5未満が「やせ」、BMI 25.0以上が「肥満」とされます。
若い女性は次世代をその身体に宿す、いわば未来の社会にとっての母親たちです。
「やせ」が母体とおなかの赤ちゃんに悪影響を与え得ること、その内容がよく分かると、若い女性の「やせ」に潜む問題が、遠く将来にまで及ぶ社会問題であることが見通せます。
日本では、20代女性の「やせ」の割合が29.0%と著しく高い割合を示し、一方、同年代の女性の「肥満」の割合は7.9%です。
妊娠に最も適した体重・体格はBMI 22前後と、一般的な健康指標と変わりないでしょう。
もし20代女性が妊娠に適した体格を目指すとき、ダイエットする人の割合よりも、体重を増やす必要のある人の方がはるかに多いのです。
若い女性の「やせ」は、母体のみならず、その方が将来身ごもる赤ちゃん、子どもに、大きな影響、残念ながら悪い影響を与えるものです。
もしもの数字ですが、20代の女性が妊娠した時に約3割の赤ちゃんに母体の「やせ」による悪影響が出るであろうことを考えると、29.0%という数値の異常さが分かりやすいかもしれません。

摂食障害・過食症・拒食症が蔓延する日本

日本で、若い女性にやせすぎの方が多い原因のひとつとして、摂食障害・過食症・拒食症の蔓延が挙げられます。
日本では過食・排出型の神経性やせ症や摂食制限型の神経性やせ症など「やせ」が病気のサインとなるタイプの摂食障害の割合が多いのかもしれません。

(3)自覚に乏しい摂食障害

摂食障害・過食症・拒食症に特徴的なサインは、当人にとっては自覚することが難しく、そもそも摂食障害は病気の自覚に乏しいという特徴を持っています。
過食の後に数日は水分しか摂らない状態や、極端に食事制限した状態が続き、しばらくしてまたドカ食いしてしまう、というのは摂食障害に見られる典型的な食行動のパターンですが、極端な食事制限をしているという自覚が無かったり、これぐらい普通、と捉えている方も多いようです。
摂食障害・過食症・拒食症には、さまざまな病型、症状があり、単にやせても太ってもいなければ大丈夫とか、吐いていなければ大丈夫、というものではありません。
「がん」と診断された方が、自分では病状がはっきりと分からないように、摂食障害・過食症・拒食症の場合も、病状の程度や回復状況は精神科医、専門家が判断するものなのです。
自己判断でなんとなく治った気になっている、大丈夫な気がしている状態は、非常に危険で、治療から遠ざかっているため病状が悪化している、とまで言えるでしょう。

(4)依存症の思考が治療を遠ざける

過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や便秘薬、利尿剤のあやまった使用がある場合は間違いなく摂食障害と言えるでしょうし、患者さん本人もどこかおかしいと感じていることが多いものです。
しかし、そういった方々ですら、「悪いクセ。」、「こんなこと、本気になればやめられる。」「結婚したら、妊娠したら、やめよう。」などと自分を誤魔化し、自分が病気であることを真正面からは受け入れられないものです。
将来こうなったらやめよう、自分が本気になればやめられる、と思っている状態は、依存症に典型的な思考パターンで、そうなっている限り、依存症の底なし沼から抜け出ることは絶対にできません。
そのような状態で妊娠してしまったとき、もっとも被害を被ることになるのは、母体となる自身の心と身体に加え、おなかの赤ちゃんです。
摂食障害・過食症・拒食症の状態での妊娠は、流産、早産になりやすったり、妊娠高血圧症候群という妊娠合併症になりやすかったり、おなかの中で赤ちゃんの成長が遅れる(子宮内胎児発育不全)ことが多いなど、さまざまなトラブルがつきまといます。

(5)過去にやせていた場合も要注意

過去に拒食に陥り、身体が極端に痩せたことのある場合も、妊娠経過に注意が必要です。
卵子はその方が母親の子宮にいる時から卵巣に備わっており、胎児のころから運命をともにしています。
「やせ」の時期の低栄養による悪影響は、身体に確実に降り積もっているものですが、その悪影響は卵子にも及ぶでしょう。
つまり、その卵子を片割れとする、将来の子どもに悪影響が及ぶということです。
また、妊娠やつわり、育児疲れなどから、摂食障害が再発、悪化する可能性もあります。
病識に乏しいのは摂食障害・過食症・拒食症の特徴でもあり、妊娠をきっかけとして摂食障害と診断された方の中には、本人も気づかぬうちにすでに発症していたり、自己判断で治ったと思っていただけ、というケースも多いでしょう。
母体となる身体と将来身ごもる赤ちゃんのことを思えば、妊娠する前、思春期、もっと言えば幼少期のころから健康的で標準的な体格でいることが理想です。
幸いなことに、日本はそれを実現できる物的資源に豊富です。
ところが、その日本で若い女性のやせの比率が異常に高い、というのは、なんという皮肉でしょうか。

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