摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【9】-26 妊婦さんに摂食障害を疑うポイント

(1)妊娠中の体重の増減が過剰な場合

妊娠中の体重増加が過少であったり過剰であったりする場合、その妊婦さんは摂食障害である可能性があります。
やせ衝動が強く働けば、体重を増やせないからです。
過食衝動が強く働けば、過食により体重は増えすぎるからです。
たとえ、妊婦さん自身が体重増加の過少や過剰が有害となりうることを知っていても、摂食障害のやせ衝動、過食衝動の前には何の抑止力にもなりません。
意志の力でコントロールできないのが衝動なのです。

体重増加が大きなストレスになる

また、基礎疾患や妊娠合併症が無いのに、妊娠前から「やせ」があって、妊娠中の体重増加がおもわしくない妊婦さんは、かなりの確率で摂食障害でしょう。
摂食障害の中には、妊娠中にちょうど良い体重増加を果たせる方もいるかもしれません。
しかし、そのためには徹底した食事管理など多大な努力を必要とし、大きなストレスを伴うはずです。
それは、正常妊娠経過を逸脱させるほどの大きなストレスになり得ます。
体重増加を防ぐためにチューイングや嘔吐を必要とした場合、その方はほぼ間違いなく摂食障害です。

(2)妊娠中の体重増加に対する知識不足?

現在、日本で妊娠可能な年代の女性のやせの問題が大変深刻となっています。
妊婦さんの体重増加量も大きく変化しており、すべての方において約1.5~3kg減少しているそうです。
そしてそれに呼応するように、新生児の出生体重はこの20年間減少の一途をたどってきました。
Barker仮説、DOHaDの概念を知っていれば、これがいかに大変な事態か分かるはずです。
日本のデータですが、妊婦さんの約60%が自身の望ましい妊娠中の体重増加量を約7~8kgと答えたそうです。
これは、至適体重増加量の推奨範囲を大きく下回る値で、低出生体重児の発症リスクが高くなる値でもあります。

正しい知識の早急な啓蒙が必要

妊娠中の体重増加が多過ぎると良くないことを知っている妊婦さんは多いのでしょう。
しかし、妊娠中の体重増加が少なすぎても良くないことを知っている妊婦さんは、少ないのかもしれません。
「やせ」や妊娠中の体重増加量の過少が及ぼす害について、早急に啓蒙が成されるべきです。
妊娠する可能性のある女性やその周囲の人々は、「やせ」が妊娠と次世代に及ぼす不利益を十分に理解する必要があります。
母親の「やせ」がお腹の子どもの将来、次世代に及ぼす害について、前項【9】-15~で詳しく述べました。

(3)潜在的な摂食障害?

母親の「やせ」や妊娠中の体重増加量の不良は、妊娠分娩経過やお腹の子どもの将来に害を及ぼし得るものです。
これらの啓蒙が十分に行われてなお、妊娠中に望ましい体重増加を果たせない妊婦さんがいるとしたら、そこにはかなりの数の摂食障害患者さんがいるとしか思えません。
あなたがBMI 18.5未満で、これまでの知識を十分理解できても、妊娠による十分な体重増加に抵抗がある場合、妊娠を考える前に自分自身に摂食障害の兆候が無いかよく考えてみてください。
ある摂食障害の妊婦さんが産科の先生から、「あなたの体格の場合は、お産までに7~9 kgぐらい体重が増えるのがいいね。」 と言われたそうです。
彼女はそれを聞いて、7kgまで増やして良い、と思ったそうです。
摂食障害であれば、その思考回路は極自然なものです。
幅を持った体重増加を医師から提案されても、少ない方の体重増加にゴールを設定するのは、摂食障害のやせ衝動の影響です。