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【9】-22 妊娠にふさわしい体格・体重増加

(1)日本での目安<

妊娠によって母親となる女性の体重が増えるのは自然の摂理です。
妊娠するのに「ふつう」の体格として、BMI 18.5以上、24未満という指標があります。
私の考えでは、妊娠に最もふさわしい妊娠前の体格は、BMI 22だと思います。
一般的にいっても、BMI 22は最も病気になりにくい体格です。

妊娠前の母親の体格が「やせ」であったり、肥満であったりすると正常妊娠過程を逸脱する可能性があります。
BMI 22に抵抗のある女性は、「やせ」が妊娠にどれだけの害をもたらすかを知らないか、摂食障害があるかでしょう。
妊娠前の女性の体格(BMI)別に、妊娠全経過で果たすべき体重増加の目安があります。
① BMI<18.5の場合、+9~12kg
② BMI 18.5~25の場合、+7~12kg
③ BMI>25の場合、ケースバイケース

妊娠中期から後期にかけて、①、②の方は、0.3~0.5kg/週の体重増加が望ましいとされます。(BMI 24あるいは25以上では個別対応です。)
これはあくまでも目安です。
個々で体質が異なりますから、至適な妊娠時体重増加にも個人差があるものでしょう。

(2)「子どもはお弁当を持って生まれてくる」

妊婦さんの体重は、徐々に増えていくのが望ましいとされます。
短期間に体重が増えすぎたからといって、妊娠中一次的にでも体重を減らす行為は危険です。
なぜなら、妊娠中の母親の体重増加は、お腹の子どもを健やかに産むために、非常に重要な要素となるからです。
妊娠中の体重増加は、その方自身の妊娠中の健康状態と、お腹の子どもの健康状態に大きく影響します。
一般に、妊娠中の体重増加量が大きいほど、お腹の子どもの出生体重も大きくなる傾向があります。

子どもはお弁当を持って生まれてくる、とも表現されます。
巨大児などの例外はありますが、ある程度大きく生まれた方が安心なのです。
そのお弁当は、お母さんが準備します。
母親となる女性の身体そのものと、母親が妊娠中に食べたものとが、胎児の身体を育みます。
生後1年未満の子どもの死亡率を乳児死亡率といいますが、乳児死亡率は出生体重が少ないほど高くなるという事実があります。
出生体重は子どもの生命予後とも関係する重要なファクターです。
「小さく産んで大きく育てる」の概念は、そうせざるを得ない場合を除き、望ましいやり方ではありません。

(3)ストイックな体重管理は必要か

新生児の出生体重はこの20年間減少の一途をたどってきました。
このことは、すべての妊娠女性において妊娠中の体重増加量が減少していることと関係があるはずです。
日本では、過去の妊婦健診指導で、かなりストイックに妊婦さんの体重管理が行われてきた経緯があります。
妊娠中の体重増加と妊娠高血圧腎症(かつての妊娠中毒症)との関連が強調されていたためです。
妊娠中の体重増加量が多すぎると、妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症を含む概念)の発症率が上がることは事実です。
しかし、妊娠中の体重増加量が少なすぎても、妊娠高血圧症候群の発症率が上がるのです。
妊娠中の体重増加を抑制しても、妊娠高血圧症候群を予防できない、といわれています。
現在、妊娠高血圧腎症のリスク因子としてはっきりしているのは、母体が高年齢であることと、腎疾患の既往があることです。
すべての妊婦さんに、ストイックに妊娠中の体重管理をすることはナンセンスです。
意味がないどころか、妊娠中の体重増加不良が子宮内の低栄養を招くことを考えれば、有害とすらいえます。

「ゆるやかな指導」となる現状

実際の臨床の場では、妊娠中の母体の体重増加に関して、さまざまな方針の産婦人科があることでしょう。
しかし、妊婦さんの妊娠中の体重管理に関して「ゆるやかな指導」を行うことが現在の流れです。
海外では、妊娠に伴う体重増加の上限を、特に設けていない医療圏もあるほどです。
母親に、妊娠に伴う負担を背負うだけの余力が十分あれば、本来は体重が多少増えすぎても問題ないのでしょう。