摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【9】-21 子どもの将来のために

(1)子どもの将来・・その前に

妊娠前の母親の「やせ」や妊娠中の体重増加不良は、その子どもの将来に大きな影響を与えます。
それは、子どもが過酷な子宮内環境を生き延びて無事に生まれ、成長した場合です。
母親の「やせ」や妊娠中の体重増加不良によって、妊娠分娩経過・子どもが生まれてすぐにも大きな影響が出ます。
妊娠前、母親となる女性に「やせ」がある場合、早産・子宮内胎児発育不全・常位胎盤早期剥離・低出生体重児出産の危険があります。
妊娠中の体重増加が不良である場合も、同様の危険があります。
常位胎盤早期剥離の合併により、赤ちゃんが生きて生まれてこれないかもしれません。
早産・胎児発育不全での出生は、子どもが生まれてすぐから多くの困難を乗り越えなければならないことを意味します。
満期産であったとしても、低出生体重児として出生した場合、心配事はいくつもあります。
新生児期(生後1カ月未満)には低血糖が心配されます。
赤ちゃんが黄疸になるのは普通の経過ですが、体重が小さいと黄疸の悪影響が出やすいともいわれています。

(2)新生児期にもリスクは多い

「やせ」の状態で妊娠することは、母親にとっても子どもにとっても多くの危険をはらみます。
子どもにとっての危険についてまとめてみます。
母親の妊娠前からの「やせ」は、常位胎盤早期剥離のリスクを上げるという報告があります。
これについては、【9】-11 常位胎盤早期剥離の概要 、【9】-12 常位胎盤早期剥離と摂食障害のカンケイの項で詳しく書きました。
母親が常位胎盤早期剥離を合併すると、子どもがお腹の中で死んでしまったり、生まれてきても脳性まひなどの後遺症が残ることがあります。
また、切迫早産・早産になりやすく、子どもが未熟児(早期産児)として生まれる危険があります。
未熟児として生まれると、新生児仮死という全く元気のない状態で生まれたり、呼吸障害を起こすリスクがあります。
早産の程度によっては、集中的な新生児医療を受ける必要があるでしょう。
次に、子どもが低出生体重児として生まれる危険があります。
子どもが小さく生まれることで、呼吸障害・低血糖など合併しやすく、集中的な新生児医療が必要となることがあります。
母親がやせた状態で妊娠すると、胎児期・新生児期にも、子どもにさまざまな危険が生じうるのです。

(3)生活習慣病の一次予防

妊娠する前から、ひいては妊娠するまでの女性の全人生の栄養状態が良好であればあるほど、身ごもる子どもの将来は明るくなります。
ここは先進国で、物質的にはその条件を十分満たしうるところです。
妊娠する前までの女性の人生に「やせ」がないこと。
妊娠する前から妊娠中にかけて、多彩でバランスの良い食生活が送れること。
これでその女性は、将来身ごもる子どもに健康な一生を、さらには次の世代の健康までもプレゼントできます。
これは、母親が子どもにしてあげられる最高のプレゼントのひとつです。
妊娠前から妊娠中にかけて母親となる女性の栄養状態を良好に保つことは、生活習慣病の究極の一次予防になります。

摂食障害の根本治療という課題

妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症を除くと、先進国で母親が栄養状態を良好に保てない代表的な疾患に摂食障害があります。
摂食障害は女性に多い病気です。
女性の思春期頃から発症し、その後の慢性化も少なくありません。
摂食障害となることで、栄養状態が不良となり、それはその女性の卵子にも大きな影響を及ぼすでしょう。
摂食障害は一旦回復しても、容易に症状が再発することでも知られています。
摂食障害の再発率の高さは、根本的な治療が成されていないことを示しています。
高い医療水準を誇る日本の医療現場でさえ、根本的な治療法が分かっていない病気なのです。
日本では少子高齢化が進んでいます。
少数精鋭となるべき次世代の健康を守るためにも、摂食障害の根本的な治療が必要です。

(2)生活習慣病の一次・二次予防

生活習慣は、生活習慣病の病気の本質ではありません。
その方が胎児期に子宮内の低栄養によって獲得した体質と、生まれた環境とのミスマッチが、生活習慣病の病気の本質です。
胎児期の低栄養で獲得した体質は、余力がそれほど無い身体ということでもあります。
余力がそれほど無いために、ストレスによる身体の変化が起きやすく、妊娠による負担に耐えかね、加齢による影響が出やすいのです。
しかし、自身の傾向が分かっていて、注意深く生活することで、その影響は少なくなるでしょう。

体質は変えられないけれど・・

注意深く生活するという意味は、食習慣、運動習慣、休養などの生活習慣を、可能な限り良好に保つことを指します。
具体的に言うと、バランスの良い食生活を送り、適度に運動し、疲れたら十分に休む、ということです。
おそらく、タバコは吸わない方がいいでしょうし、アルコールも適量に止める方がいいでしょう。
生活習慣病になりやすい体質を根本から変えることはできません。

しかし、生活習慣を良好に保つことで発症・進行を遅らせることができるでしょう。
生活習慣病になりやすい体質の人が、生活習慣をより良好に保つことは、生活習慣病の一次予防になります。
生活習慣病になりやすい体質があると分かった上で、定期健診などの身体のメンテナンスを適宜行うことによって、病気の早期発見にもつながるでしょう。
これは生活習慣病の二次予防となります。