摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【9】-12 常位胎盤早期剥離と摂食障害のカンケイ

(1)「やせ」が発症を助長する

「やせ」は摂食障害の主な症状のひとつです。
妊娠前の母体に「やせ」があった場合に、常位胎盤早期剥離を発症しやすいといわれています。
妊娠前の母体に「やせ」がある場合の常位胎盤早期剥離のリスクは、妊娠中の体重増加が良好であれば低くなるようです。
しかし、母親が摂食障害を患っている場合、おそらく妊娠中の体重増加はうまくいきません。
「やせ」を主徴とする摂食障害の妊婦さんは、常位胎盤早期剥離を起こしやすいといえます。
妊娠前の母体に「肥満」があった場合は適度な体重増加を維持すれば、常位胎盤早期剥離のリスクは低下するといわれています。

(2)母体のもつ精神疾患とのカンケイ

常位胎盤早期剥離は母親となる女性の精神疾患とも関わりがあることが知られています。
うつ状態・不安・ストレスをもつ妊婦さんでは、もたない妊婦さんに比べ常位胎盤早期剥離の発症頻度が高いそうです。
摂食障害には、うつ病・不安障害が併存することも多く、そもそもストレスの影響を受けやすい病気です。
摂食障害を患っているだけで、妊娠前の体格に関わらず、常位胎盤早期剥離のリスクとなるでしょう。

(3)過食や嘔吐行為による胎盤の損傷

妊娠中の一般的な経過として、妊娠中期から後期にかけて子宮がどんどん大きくなります。
過食による胃の拡張や、嘔吐行為、嘔吐するときの体勢は、物理的に子宮を圧迫します。
摂食障害では、一度の食事の際に、何度も食べ吐きを繰り返すことがあります。
過食による胃の拡張と嘔吐行為、嘔吐の体勢による子宮への繰り返す物理的圧迫は、胎盤にダメージを与える可能性があります。
過食嘔吐行為が物理的に胎盤を損傷した場合、常位胎盤早期剥離につながることもあるでしょう。
胎盤は臨月に近づくほど、その役目を終える段階に入ります。
胎盤の寿命です。

胎盤の寿命に近ければ近いほど、過食や嘔吐行為による胎盤への損傷が強く出る可能性があります。
また妊娠高血圧症候群など、もともとの胎盤の構造に問題がある場合なども、胎盤は傷つきやすいでしょう。
過食や嘔吐行為は、常位胎盤早期剥離のリスクとなります。

(4)常位胎盤早期剥離のリスクは常にある

摂食障害合併妊娠は常位胎盤早期剥離のリスク因子になるでしょう。
「やせ」がある場合、過食嘔吐がある場合、うつ病や不安障害を伴う場合、特に注意が必要です。
常位胎盤早期剥離は、なんのリスク因子も持たず、順調に経過していた妊婦さんの分娩中に出現することもあるものです。
摂食障害を患っている場合、幸福なことに順調に経過していたとしても、常位胎盤早期剥離が起こる可能性は常にあるのです。
常位胎盤早期剥離の発症に関して言えば、無事に赤ちゃんが生まれてくるまでは安心できません。

摂食障害を医師に伝えることの重要性

常位胎盤早期剥離は発症予知も難しく、一旦起こってしまえばいかに迅速に対応できるかが重要となってきます。
まず、摂食障害が常位胎盤早期剥離のリスクとなることを医療従事者が認識しておくことです。
また、妊婦さんは産婦人科医に自分が摂食障害であることや症状について伝えておかなくてはいけません。
医療従事者がリスクを認識していた方が、より迅速に対応できるでしょう。

(5)事例より

臨月まで過食嘔吐を止められなかった妊婦さんが、しかるべき治療機関で症状が止まりその20日後に出産しました。
幸いなことに妊娠分娩経過に大きな異常なく、満期産で、やや小さめの女の子を出産しました。
摂食障害の方が安定した妊娠経過を過ごし、元気で健康な赤ちゃんを産むことは奇跡に近いことです。
ましてや、この方は分娩の約3週間前まで、妊娠経過中のほとんど毎日過食嘔吐の症状が出ていました。
摂食障害が常位胎盤早期剥離のリスクであることを考えれば、20日間でも、分娩前に過食嘔吐が止まったことは非常に意義深いことなのです。

(6)早急に摂食障害を治す行動を

摂食障害の方が妊娠した場合、一刻も早く、がまんせずに過食嘔吐やチューイングの症状を止める必要があります。
がまんすることなく過食嘔吐やチューイングを止めるためには、そのための治療機関を頼ってください。
「今」からできることをしましょう。
摂食障害を治すのに、遅すぎるということはありません。
摂食障害を治さずに放置する未来は、悲惨以外のなにものでもないからです。
妊娠中に過食や過食嘔吐、チューイングをしてしまうことで、自責の念や罪悪感が生じます。
妊娠に伴う環境の変化や、妊娠・分娩への不安は、変化に弱い摂食障害の特性を考えるとストレスとなります。
自覚に薄くとも、摂食障害の妊婦さんが受けるストレスは相当なものです。
妊娠中の過大なストレスは、流早産を誘発したり常位胎盤早期剥離の発症率を上げます。
がまんすることなく症状が止まれば、摂食障害の症状に伴うストレスから解放されます。
過食や過食嘔吐行為による子宮への物理的な刺激が止むことで、それによる早産や常位胎盤早期剥離の危険も少なくなるでしょう。
過食・過食嘔吐・チューイングをがまんすることなく早く止められれば止められるほど、摂食障害が妊娠分娩経過に及ぼす悪影響は少なくなります。