摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【08】‐1 耳下腺や顎下腺が腫れるしくみ

(1)耳下腺とは?

過食嘔吐・チューイングで顔が腫れて大きく見えることがままあります。
嘔吐やチューイングによって、耳下腺や顎下腺が腫れるためです。

「過食嘔吐やチューイングで、顔が腫れたり、まるくなるってどういうこと?」
「嘔吐やチューイングをするとなぜ耳下腺が腫れるの?」
こういった質問もよく耳にします。
それにはまず、耳下腺がどういう器官なのかを説明しましょう。

耳下腺は、唾液を産生する唾液腺という器官です。
左右の耳たぶの下からあごのあたりに、耳下腺があります。
耳下腺で作られた唾液は、1本のクダに集まります。
そのクダが、顔まわりの筋肉をまたいだり、つらいぬいたりして、口の中の出口(耳下腺開口部)につながります。
その耳下腺開口部から、耳下腺で産生された唾液が、口の中に分泌されるわけです。

耳下腺開口部は上の歯の奥歯の外側の頬粘膜にあります。
その部分は、耳下腺乳頭ともいいます。
左右にひとつずつ耳下腺がありますので、耳下腺開口部も左右の頬粘膜にひとつずつあります。

(2)なぜ摂食障害で耳下腺が腫れるのか?

過食嘔吐や、チューイングでは、通常の食事の何倍~何十倍も噛んで、飲むという動作を繰り返します。
大量の食べ物をなじませるために、その分、大量の唾液も必要になります。
耳下腺で唾液の産生が活発になるだけでも、耳下腺が発達し、大きくなる原因になります。

また、過食嘔吐やチューイングでは、通常の何倍、何十倍と噛む動作を繰り返します。
食べ物によって口の中が傷ついたり、自分で口内を噛んでしまったりする回数も、通常の食事よりも多くなります。
嘔吐がある場合、吐物に含まれる胃酸が口内全体に火傷のようなダメージを与えます。

過食嘔吐、チューイング行為がある場合、その方の口内は、荒れて、傷が多く、ダメージの多い状態です。
ダメージ、炎症は、痛みや腫れを伴います。
口腔粘膜にある耳下腺開口部やその周辺の口腔粘膜にダメージが及ぶと、その腫れによって耳下腺開口部が圧迫され狭くなります。
過食嘔吐やチューイングによって唾液の産生は活発に行われているのに、その出口である耳下腺開口部は狭くなるので、耳下腺が腫れてしまう、と思われます。

咀嚼筋の発達による影響

過食や過食嘔吐、チューイングでは、たくさん噛むので、噛むための筋肉である咀嚼筋(そしゃくきん)が発達します。
咀嚼筋は顔周りの筋肉を構成しています。

耳下腺で作られた唾液が通るクダは、顔周りの筋肉をまたいだり、つらぬいたりして、頬粘膜の耳下腺乳頭に開口します。
過食や過食嘔吐、チューイングの影響で咀嚼筋が発達し、その唾液の通るクダを物理的に圧迫することもあるでしょう。
耳下腺開口部が狭くなる以外にも、耳下腺で作られた唾液の通り道の段階で、唾液の排出がじゃまされて耳下腺が腫れる場合もあるでしょう。

(3)顎下腺も腫れる

また、唾液腺には顎下腺という器官もあり、これは下あごにあります。
この顎下腺で産生された唾液を口腔内に送り込むための開口部も、口腔内(舌の裏側)にあります。

過食嘔吐やチューイングで口内が荒れ、ダメージを受けると、顎下腺の開口部にも腫れが及んで狭くなることもありえます。
そうすると、耳下腺の腫れと同様のしくみで顎下腺が腫れることもあるでしょう。
耳の下の部分よりも、あごの部分のまるみが増したように感じる場合は、顎下腺の腫れなのかもしれません。

(4)まとめ

摂食障害の症状である、過食嘔吐、チューイングによって・・・
①過食・チューイングによって、耳下腺や顎下腺で唾液の産生が活発になる。
②過食・嘔吐・チューイングによって口内が荒れ、耳下腺や顎下腺で産生された唾液の出口が狭くなったり、過食やチューイングによって咀嚼筋が発達することで、耳下腺で作られる唾液の通り道が狭くなったりする。
こういったしくみで、唾液腺である耳下腺や顎下腺が腫れると思われます。
また、著しいやせを伴い栄養不足が深刻で、蛋白質カロリー異栄養症という状態に陥っている場合にも耳下腺や顎下腺などの唾液腺が腫れる、ということが知られています。