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【17】-2 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は危険なハイリスク妊娠

(1)医療従事者の認識不足の問題

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤や利尿剤のあやまった使用、過度な食事制限とその後のドカ食いや過食、これらは摂食障害という病気の症状です。
摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は、妊娠や出産のときにさまざまな問題を抱えることが多く、ハイリスク妊娠と言われています。
しかし、摂食障害に対しての世間の認識は、誤ったものも多く、なかには精神科医、カウンセラーなどの医療従事者、専門家を名乗る方々の中にあっても、摂食障害・過食症・拒食症への理解がほとんど無かったり、認識がズレていたりすることもあるようです。
病気に対する理解・認識が、専門家のあいだですら、このようにあやふやだからでしょうか、摂食障害の患者さんが妊娠するということのリスクについて、ハイリスク妊娠を扱う医療従事者、産科の医師や助産師の間でも、よく知られていないようです。

(2)摂食障害合併妊娠へのバックアップ不足の問題

摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、流産や早産になりやすく、妊娠中、母体の高血圧を合併しやすいなど、母体にも大きな影響がでる妊娠合併症になりやすかったり、おなかの赤ちゃんの成長が滞りやすく、おなかの赤ちゃんが生まれた時に元気が無かったり、体重が少なすぎたり、頭のサイズが小さい傾向にある、など、母、子、双方にさまざまで、時に深刻な問題が見られます。
摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、
摂食障害という病気に対する理解のある精神科医、カウンセラーなどの専門家、
妊娠やお産に関する専門的な知識、身体や心に病気を抱えた状態で妊娠した場合、ハイリスク妊娠を診療することができる産科医や助産師、
摂食障害・過食症・拒食症の身体合併症を診ることができる内科医、救命救急医、
子どもの出生時のトラブルの対応、その後の発達を見守る小児科医など、
複数の診療科に渡る医師、医療従事者の連携、情報の共有が必要になるでしょう。
しかし、そのような充実したバックアップ体制で妊娠、お産に望める方はごく少数でしょう。

子育て中のサポートの必要性

お産を終え子育ての段階に入っても、育児疲れから摂食障害・過食症・拒食症が再発したり病状が悪化することもあります。
また、摂食障害の母親は子育てに困難を抱えることが多く、誰にも相談できず、さまざまなストレスに曝され、耐えているうちに、愛しているはずの子どもを虐待してしまう、ということも起こり得ます。
本来なら、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠を乗り越え、お産に至った後にも、母親と子ども、双方をきめ細やかにサポートしていく体制が必要です。

(3)摂食障害合併妊娠においてトラブルは当たり前

それまで健康に過ごしていてすら、妊娠時期に特有の病気(妊娠合併症)を発症する方もいるほど、「妊娠」という変化は女性にとって大きく、それが人生の転機ともなります。
健康な母体であっても、妊娠、出産に際して、ときに命がけの事態に陥ることもあるのです。
本来、摂食障害・過食症・拒食症という大変な病気を抱えて妊娠し、ましてや過食や過食嘔吐など、なんらかの摂食障害の症状を抱えた状態で、妊娠経過に一切問題が無い、というほうがおかしいのです。
妊娠をきっかけに症状が再発してしまったり、妊娠中も症状が止められない、という事態は摂食障害であれば当然ありうることで、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠では、妊娠経過、お産を見守るための専門的なバックアップ体制、その後も継続的に母子を見守るサポートが必要です。

(4)摂食障害医療の現状の前に口をつぐむ母親たち

医療従事者や専門家の間であってすら病気の認識が定まらず、あやふやであること、
摂食障害・過食症・拒食症という病気の世間的な負のイメージ、
ときには精神科医ですら、その世間的な負のイメージをそのまま摂食障害という病気に当てはめている、世間でも医療界でも見られる混乱、
これが摂食障害の医療の現状です。
このような状況では、妊娠にまつわるさまざまなトラブルに対応する産科医でも、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠について適切に診療することはおろか、摂食障害について正しく把握することすらできないでしょう。
このような医療の混乱の中では、自身の過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤のあやまった使用について、患者さんから医療者に告白することは、とても難しいことです。
まして、妊娠という大きな変化の真っ最中にあり、妊娠しても止められない過食・過食嘔吐・チューイングに加え、おなかの赤ちゃんへの罪悪感や自己嫌悪を抱えた患者さんが、どうして自身の状況を正直に医療者に話せるでしょう。
妊娠経過になんらかの異常があった場合、よけいに患者さんからは過食や過食嘔吐について告白しづらくなるでしょうし、もし、それでおなかの赤ちゃんを失っていたとしたら、大きすぎるショックから口を閉ざす方も多いでしょう。
医療従事者などの専門家を含め、周囲の人々が妊婦さんの摂食障害・過食症・拒食症のサインを見逃してしまい、適切なサポートを受けられず、苦しんでいる摂食障害の母親達、その子ども達を、これ以上増やしてはいけません。

(5)摂食障害合併妊娠の全容の解明に向けて

摂食障害・過食食・拒食症の患者さんが症状を医療者、専門家に告白しづらい状況、
摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠を見守り、安全にお産を終えられるよう見守るためのバックアップ体制がほとんど無い状況、
摂食障害の理解が薄い産科医などの医療者が、妊婦さんの摂食障害のサインを見逃してしまう状況、
このような状況で、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の全容など分かるはずがありません。
摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠は妊娠中からお産に至るまで、さまざまなトラブルを抱えやすいハイリスク妊娠です。
摂食障害に対する理解が進み、患者さんと医療者との信頼関係ができ、患者さんが周囲のサポートを今よりも気楽に受けられるようになれば、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の全容が徐々に明らかになるでしょう。
そして、現在の認識以上に摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠の危険性は高く、細心の注意が必要であることが分かってくるでしょう。

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