摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【15】-3 摂食障害の専門的な治療について

(1)さまざまな専門治療

摂食障害の代表的な専門治療として、認知行動療法、対人関係療法、精神療法(力動的精神療法、精神分析的精神療法、支持的精神療法)、家族療法、薬物療法があります。
治療者の指導のもと、セルフヘルプ用の一冊の本をもとに、患者さん自らが症状の改善に取り組む方法(ガイデッドセルフヘルプ法)もあります。
ガイデッドセルフヘルプ法、認知行動療法、対人関係療法は、過食・過食嘔吐などの症状を軽減させる治療効果がある、と科学的に認められたものです。
摂食障害の患者さんが未成年の場合、家族療法の効果も期待できますが、日本では治療者、家族療法家が絶対的に不足しています。
摂食障害のための認知行動療法、対人関係療法は、数か月間~半年を目途とした、期間限定の心理療法です。
摂食障害の根本的な解決を望むのであれば、さらに長期間の精神療法、カウンセリングが必要と言われています。
過食・過食嘔吐・チューイングなどの摂食障害の症状に対して、それぞれの治療で、具体的にどのように対応するのか、さらに詳しく見ていきましょう。
※認知行動療法、ガイデッドセルフヘルプ療法については【15】-4 認知行動療法、ガイデッドセルフヘルプ法とはをご覧ください。

(2)対人関係療法の立場からの対応

対人関係療法は、食行動に焦点を当てることはあまりなく、患者さんにとって大切な人との関係性を改善したり、人間関係におけるストレスを軽減することに治療の焦点をしぼっています。
人間関係のストレスが減れば、心全般が楽になり、最終的に過食や過食嘔吐が減るだろう、というわけです。
過食をがまんすることは、病者の役割に含まれない、という治療者の姿勢がはっきりしており、食事日誌を書く必要もなく、食事や生活の決まり事なども特にないので、比較的取り組みやすい治療かもしれません。
一方、対人関係療法は、効果が現れるまでに時間がかかるという面があります。
対人関係療法では、まずは対人関係面の安心や自信が持ててから、過食や過食嘔吐がおさまってくる、という考え方です。
「心は楽になっている感じがするから、症状もいつかとまるはずだ。」
「過食が止まるのは一番最後。」
と自分を励まし、治療を頑張って続けても、結局症状がいつまでたっても止まらない、ということも起こりうるでしょう。
治療がうまくいって人間関係のストレスが減れば、楽になった感じがするだけに、症状がずっと止まらなくても、漫然と治療を続けてしまうかもしれません。

(3)精神療法の立場からの対応

摂食障害・過食症の根本的な解決を望むのであれば、長期間の精神療法、カウンセリングが必要となるでしょう。
精神療法における過食・過食嘔吐・チューイングなどの症状への具体的な取り組みはどうなっているのか、専門書からの抜粋です。

・食行動などの症状は防衛的な産物とみなし、症状の改善を一義的な治療の目的とはしない
(「摂食障害の最新治療」 p 189 第10章 力動的精神療法の立場から より抜粋 )/★
・生命に危険のない場合には、食事の摂取や嘔吐については具体的に指示せず、体重の増減にも関心を示さない。
(「摂食障害の最新治療」 p 195 第10章 力動的精神療法の立場から より抜粋)/★

精神療法では、過食などの症状に注目しない、さらには症状の改善を目先の目的としない、ということがはっきりと示されています。
また、以下のような記載もあります。

・治療効果の経過中に過食・嘔吐の意味を患者が分かることによって、症状が改善されていくことがある。一方それが分かっても症状が軽快しないこともある
(「摂食障害の最新治療」 p 197 第10章 力動的精神療法の立場から より抜粋)
治療は10年近くもしくはそれ以上の長期に及ぶので、時期に応じて治療医師が変わることが多いのです。
(「摂食障害治療ガイドライン」 p 81 第7章 さまざまな治療 7-2 支持的精神療法 より抜粋)

過食や過食嘔吐の意味が分かることで症状が改善されることもあれば、改善しないこともある、というのは、精神療法の効果が出て、患者さん自身が自分の心の機微に気づいたり、心全般が楽になっていったとしても、必ずしも症状が止まるわけではない、ということを示しています。
心は楽になっているものの、症状は止まっていない、というのでは、症状を止めるために治療が必要という大前提を考えると、なんともはがゆいものです。
そのような状況で、年単位の治療を続けることができる患者さんはほとんどいないでしょう。

(4)摂食障害の薬物療法

・薬物としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの抗うつ剤が過食嘔吐を減らす効果があると言われています。ただし、長期の効果については不明で、薬物だけでの完治は困難だと考えられています。
(「摂食障害情報ポータルサイト(HP) 一般の方へ 摂食障害について 摂食障害はどんな病気? 神経性過食症 治療」より抜粋)
・しかしながら、現状では、本症は心療内科的な対応しかできない難治性疾患であり、特効的な薬物はありません
(「難病情報センター(HP) 中枢性摂食異常症 3.研究班としてトピックス的な話題など」より抜粋)

このように、過食・過食嘔吐・チューイング症状に対する薬物療法の効果ははっきりせず、現状、摂食障害の特効薬はありません。
過食衝動を無くしてしまう薬は無いのです。
精神科領域の薬物が開発されてきた歴史をひも解けば、薬物への過剰な期待はかえってアダとなることが分かると思います。
しかし、精神科領域の薬物療法は、摂食障害に併存するうつ病など、その他の病状に有効な場合もあるでしょう。