摂食障害(過食症・過食嘔吐)のホームページ



【15】-2 摂食障害医療の取り組み 

(1)参考書や専門書にみる取り組み

摂食障害の専門的な治療では、過食・過食嘔吐・チューイングなど症状への具体的な取り組みはどうなっているのでしょう。
以下は、厚生労働省のホームページや、患者さんとご家族向けのハンドブック、日本摂食障害学会の監修する摂食障害治療ガイドライン、医師や医療従事者向けの参考書・専門書から抜粋した文章です。
厚生労働省のホームページ、患者さん向けのハンドブックは、摂食障害を抱える患者さんやご家族に正確な情報を提供するためのものです。
摂食障害治療ガイドラインや医学用専門書は、摂食障害医療の質の向上のため、医師など専門家が利用するものです。

過食を止める方法はあるか
ベテランの治療者ですら、(中略)それに対する名案は持ち合わせていない。
(「摂食障害の最新治療」 p91 第5章 精神科の立場から より抜粋)

ご本人は「過食を止めたい」と希望することが多いですが、過食以外がほとんど絶食の状態で過食を止めるのは難しいことです。
最初は「過食ゼロ」よりも、食事の規則性やコントロール感を取り戻すことを目指します。
このために、毎日の生活パターンを把握し、生活のリズムを決めます。
その上で、薬物療法、心理療法(認知行動療法など)を行います。
(「摂食障害情報ポータルサイト 一般の方へ 摂食障害について 摂食障害はどんな病気? 神経性過食症 治療」より抜粋)

治療ってどう考えたらいいの?
治療のゴールは、「症状をゼロにする」というよりは、「まずは、自分の体に命の危険が及ぶことなく、日常生活でやりたいことをやりたいようにやっていくための適切な体重、食行動を維持する」と考えて取り組んでください。
(「摂食障害ハンドブック(東京大学医学部付属病院心療内科作成)」p 13)

BN(神経性大食症)の患者さんの場合、むちゃ食いを止めようとするのではなく、その前提にある”食事制限”することをいかにして減らすかが鍵となります。・・・規則正しい食事の獲得は、AN(神経性無食欲症)にもBNにもその回復に第一に必要となる基本です。
(「厚生労働省ホームページ みんなのメンタルヘルス 患者さんへのアドバイス」より抜粋)

4 栄養指導および栄養療法の指針 2) 外来での栄養指導
④ 自己嘔吐や下剤の乱用等の排出行為はさらにむちゃ食いを増長するので、排出行為を減らすよう指導する。
(「神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン(2007年) 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 中枢性摂食異常症に関する調査研究班」 より抜粋)

BN(神経性大食症)は、自分自身での症状への取り組みがなければ治療できない疾患です。
(「摂食障害治療ガイドライン」 p 77 第7章 さまざまな治療 7-1 セルフヘルプ援助 より抜粋)

このように、過食やむちゃ食いをすぐに止められる方法はなく、過食を減らしたければ、規則正しく食事をとること、食事制限を減らすなど、自分自身で症状に取り組むことが大切だと記されています。
1日3回、時間を決めて食事を摂り、1日2回の間食を摂り、過食後も食事を抜かないように、などが指導の一例です。
嘔吐行為、下剤や利尿剤の誤用に至っては、その害を患者さんに理解してもらうことで、減らしたりやめたりすることを促す、とあります。
これらがどんなに難しく、それこそ症状の増加をまねくほどストレスがかかり得ることか、経験者にしか分からないでしょう。
不規則な食事や絶食は過食を悪化させうること、嘔吐行為、下剤や利尿剤による身体への害など、病気に関する正しい知識を得ることは大切ですが、それでも症状がどうにもならないからこそ、病気なのです。

(2)患者の負担が大きすぎる医療の現状

慢性・遷延化した摂食障害の患者さんでは、なおのこと、食事のリズムを整えたり、害を知ることで下剤をやめようとすることは、難しいでしょう。
なぜならば、そうした方が良いことは100も承知の方がほとんどだからです。
知っていても、できないから病気なのです。
患者さん自身に食行動の改善に取り組んでもらうことは、時に大きな負担となり、尋常ならざる努力を強いることになるでしょう。
ニュアンスを取り違えた患者さんが症状を我慢してしまえば、後の症状の爆発に苦しめられるのもまた患者さん自身です。
患者さんに多大な負担、努力を背負わせなければ、治療できないというのは、摂食障害がそういう病気だからなのではありません。
現状の治療体制の問題です。
治療する際に患者さんの負担を少しでも軽くするのは、摂食障害医療に携わる医療者、治療者が、取り組み続けるべき課題です。

(3)悪化因子を抑えることに捉われすぎる医療現場

摂食障害を治療する上で、絶食や節食を減らして生理的な過食衝動を抑えること、生活のリズムを整えて睡眠時間を確保することは、非常に重要視されており、広く治療に利用されています。
過食・過食嘔吐・チューイングの原因が、やせや絶食に伴う生理的な過食衝動だけなのであれば、体重が回復すれば、症状が止まらないまでも減るはずでしょう。
ところが、その逆の例は五万とあります。
絶食・飢餓・過度の節食に伴う生理的な過食衝動は、摂食障害の過食衝動を増大させうる、悪化因子に過ぎません。
夜中の過食、不規則な食生活、食事制限など、過食・過食嘔吐・チューイングの悪化因子をどうにかコントロールすることで、症状を軽減させようという方法を取るしかない、というのが摂食障害医療の現状です。

(4)症状の悪化をまねく可能性

過食そのものを止めようとすると、患者さんにがまんさせたり、無理やり止めるしか方法が無く、その後の症状の爆発を防ぐためにも、症状そのものをどうにもできないのです。
専門書のなかには、摂食障害・過食症が治っても、食事にまつわるさまざまなことがその方にとって一生のアキレス腱となりうる、とも示されます。
摂食障害の当事者にとって、食にまつわること、なにを、いつ、どう食べるかは、非常に重要なことで、それが乱されると激しい不安に襲われたり、大きなストレスとなることもあるものです。
悪化因子をどうにかしようとすることで生じるストレスが、かえって、過食衝動をさらに増大させてしまう場合もあるでしょう。
夜中の過食をなんとかしよう、なんとか絶食をやめて3食食べよう、とがんばりすぎることで、かえって過食や過食嘔吐が増えてしまう、という事態になりかねないのです。

(5)摂食障害医療はまだまだ発展途上

・摂食障害は、罹病期間が長くなると、その分、身体的・社会的・経済的損失が大きくなるため、罹病期間を短縮させるための効果的治療法の開発が求められています。
(「厚生労働省ホームページ みんなのメンタルヘルス 予後治りやすさ」より抜粋)

治療は10年近くもしくはそれ以上の長期に及ぶので、時期に応じて治療医師が変わることが多いのです。
(「摂食障害治療ガイドライン」 p 81 第7章 さまざまな治療 7-2 支持的精神療法 より抜粋)
息の長い治療関係を築き、再発のおそれのないところまで摂食障害を継続させている背景・持続因子を治療するのが日本での現実的な解決策です。
(「摂食障害治療ガイドライン」 p 182 第11章 再発 より抜粋)/★

厚生労働省のホームページの記載からは、過食・過食嘔吐・チューイング症状が長引けば長引くほど、患者さんにとっても社会にとっても損失は大きいものの、罹病期間を短縮できる治療法が無い、ということが伺えます。
その結果、治療に望む時には「息の長い治療関係」が必要となり、数年~10年以上の長期に及ぶこともあるのでしょう。
摂食障害に悩む患者さんは、病院・医療機関に頼れば、症状が減って少しでも楽になるのではないか、と期待しています。

しかし、いざ、勇気を出して病院、医療機関を受診しても、期待通りにはいかないようです。
厚生労働省のホームページや、医師向けの専門書をよく読めば、医療者、治療者もいわば暗中模索のなか、最善の治療法を探し求めている最中であることが分かるはずです。
摂食障害において、患者さんにとって最も負担が少なく、効果的な治療法は、過食・過食嘔吐・チューイング゛などの症状を、いち早く、楽に、安定的に止め、その上で本質的な治療にとりかかることです。
もし、がまんせず、安定的に過食・過食嘔吐・チューイング症状を止める方法があれば、これ以上に患者さんの希望に叶うものはないでしょうし、病気に苦しむ期間の短縮、身体的・経済的・社会的損失の大幅な軽減も叶うでしょう。