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【10】-2 糖尿病とは ⑥ 高血糖の害 その1 血液の浸透圧の上昇

では、糖尿病で高血糖だから、何が悪いのでしょうか。

高血糖の害悪とはなんでしょう。

以下に示すのは、1型糖尿病でも2型糖尿病でも、糖尿病であれば問題となる症状、合併症です。

人の身体には、生体内を一定の状態(恒常状態)に保とうとする巧妙な調節機構があります。

これをホメオスターシスといいます。

恒常性が保たれてこそ、生体内であらゆる化学反応がスムーズに働き、細胞活動が良好に保てるわけです。

このホメオスターシスは、血糖や血液の浸透圧、pH(酸塩基平衡)にも働いています。

高血糖によって、血液の浸透圧が著しく上昇します。

高血糖の害悪のひとつは、糖による血液の浸透圧の上昇です。

血液の浸透圧が上がると、細胞内の水分が血管内にひっぱられるため、細胞内は脱水になります。

また脳細胞が血液の浸透圧が高いことを感知して信号を発するため、のどが渇きます。

口から水分を摂取することで、身体の脱水を補正しようとするのです。

高血糖では細胞内脱水となり、のどが渇いてたくさん水分が欲しくなります。

また、高血糖では腎臓で精製中の原尿に糖が漏れ、その糖が腎臓から水分をひっぱるので、多尿となります。

高血糖によって血液の浸透圧が上がると、のどが渇いて、水分をたくさん摂るようになったり、尿の量が増えます。

高血糖下で、飲水と利尿のバランスが崩れると脱水となります。

脱水が極まると、意識がおかしくなったりケイレンするなど糖尿病性昏睡(高浸透圧性非ケトン性昏睡)となることもあります。

高齢者が糖尿病を発症した場合に、糖尿病性昏睡になりやすいのは、もともと高齢者が脱水になりやすいからです。

またインスリンが肝臓に有効に働かない結果として、肝細胞で糖を利用できず、ケトン体が過剰に産生されるようになります。

このケトン体は酸性の特性をもつため、血液のpHを下げ、糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス)を引き起こすこともあります。

【10】-2 糖尿病とは  ⑤ 1型糖尿病と2型糖尿病

なんらかの原因で、身体が有効にインスリンを使えなくなった状態が糖尿病です。

1型糖尿病は、自身の免疫物質が膵臓のβ細胞を攻撃してしまい、インスリンが分泌できなくなる病気です。

生体内には、インスリン以外に高血糖を抑える機構が無いため、インスリンの分泌低下はすなわち高血糖となります。

1型糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌不足による糖尿病です。

1型糖尿病は、その発症のカラクリからいえば自己免疫疾患の一種です。

2型糖尿病は、身体の細胞にインスリンが効きにくくなる状態と、膵臓が余分なインスリンを分泌できるほどの能力が無い状態の複合です。

そこには、肝臓や骨格筋細胞、脂肪細胞へのインスリンの作用不足と、作用不足を補うほど膵臓がインスリンを分泌できないという分泌不足、ふたつの状態が重なり合っています。

高脂血症や高血圧、運動不足、ストレスなどにより、糖を貯蔵するべき細胞にインスリンが効きにくくなる状態があります。

これをインスリン抵抗性と表現します。

細胞にインスリン抵抗性があっても、それを上回るほどのインスリンを膵臓が分泌できれば、当面問題ありません。

インスリン抵抗性があって、それを上回るほどのインスリンを膵臓が分泌できない場合に、2型糖尿病が発症します。

2型糖尿病は生活習慣病です。

発症機序から見ると、1型糖尿病と2型糖尿病は、全くの別の病気なのです。

【10】-2 糖尿病とは ④ インスリン

膵臓の内分泌器官であるランゲルハンス島にあるβ細胞が、インスリンを分泌します。

ちなみに同じランゲルハンス島にあるα細胞がグルカゴンを分泌します。

インスリンの分泌を最も刺激するのは、食事を摂ることによる血糖の上昇です。

インスリンは、人の身体の中で唯一血糖を下げる作用をもつものです。

一方、血糖を上げる生体内の物質は、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど複数存在します。

糖や酸素は、血流に乗って身体をめぐり、身体のすみずみの細胞にまで届けられます。

インスリンは脳細胞を除くほとんどの細胞に作用し、血液中から細胞内への糖の取り込みを促進、糖利用を促します。

インスリンは、細胞の外にある血液中の糖を、細胞内に送りこむことで、血糖を下げます。

インスリンの作用によって、細胞は糖を利用し、新たな蛋白質を作り出し、新鮮な酵素も多く供給されます。

インスリンによって作り出された新鮮な蛋白質や酵素によって細胞代謝が活発になります。

また、余分にある栄養源をグリコーゲンや脂肪に変え、エネルギー源として蓄えます。

インスリンは、高血糖を防いでくれるだけではなく、糖などのエネルギー源を細胞内で活発に利用し細胞代謝を良好にし、余剰分の栄養を蓄えるためのホルモンでもあります。

【10】-2 糖尿病とは ③ 糖の代謝・調節 インスリンとグルカゴン

生命維持に必要なのが、酸素と糖です。

生体内で利用される糖は、ブドウ糖であり、ブドウ糖のことをグルコースとも言います。

私たちは常に呼吸し、一定の酸素を身体に補給していますが、糖はそういうわけにはいきません。

私たちは、1日3度の食事から糖を得ています。

食事によって、消化管内に大量の栄養が取り込まれます。

それらの栄養は、小腸から糖、アミノ酸、脂質として体内に吸収されます。

人の身体は食事のたびに高血糖の危険があります。

そうならないのは、血糖の上昇を感知した膵臓がインスリンというホルモンを分泌するためです。

インスリンは、肝臓、骨格筋、脂肪組織など、糖の貯蔵庫でもある臓器に働きます。

肝細胞、骨格筋細胞で積極的に糖を取り込み、利用し、糖をグリコーゲンという保存用物質に変換するのがインスリンの作用です。

さらに、インスリンの働きにより、余剰分の糖は脂肪となり肝細胞や脂肪細胞に貯蔵されます。

食事で大量に取り込まれる糖は、つぎつぎと糖貯蔵臓器に取り込まれることで、血糖の上昇が抑えられます。

インスリンは高血糖を防ぐかなめのホルモンであり、また生体内で高血糖を防ぐ物質はインスリンのほかにありません。

絶食時など、血糖が下がったときには、膵臓からグルカゴンというホルモンが分泌されます。

グルカゴンは、肝臓で貯蔵しておいたグリコーゲンを糖に変えたり、脂肪やたんぱく質から新たに糖を作り出すよう働きかけるホルモンです。

グルカゴン以外にも、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチゾールや、交感神経伝達物質であるアドレナリンに、同様の作用があります。

低血糖は脳の活動低下につながる緊急度の高い異常事態なので、グルカゴン以外にも、血糖を上げる機構がいくつか存在します。

絶食や飢餓時には、グルカゴンなどの血糖上昇ホルモンが優勢に働き、肝細胞は糖を利用するのではなく、作り出す方に働きます。

肝細胞自身も、糖では無く、脂肪酸を利用してエネルギーを得ます。

このとき、代謝産物としてケトン体が産生されます。

そして、このケトン体が脳においては糖に替わるエネルギー源となります。

ただし、このケトン体は酸性物質であり、大量に産生されると、体内のpHが下がってケトアシドーシスという病的な状態に陥ります。

私たちの食行動の流れは、起床時、1日3度の食事と、夜間、睡眠時の比較的長い間の絶食、が標準的でしょう。

ほぼ24時間の単位で糖代謝は調節されており、グルカゴンなどの血糖上昇ホルモンとインスリンが絶妙なバランスで働き、血糖は巧妙に調節されています。

【10】-2 糖尿病とは ② 糖の役割

私たちの体は、生命維持や活動のエネルギーを作り出すために糖、酸素を利用しています。

人の体の中で、血糖値は、70~140 mg/dlと、かなり厳密に管理されています。

それは、低血糖も高血糖も身体の害になるからです。

脳細胞は糖からエネルギーを得ています。

低血糖は、すぐに脳の活動の低下につながる非常に危険な事態です。

飢餓などの非常時には、脳細胞はケトン体を代替エネルギー源として使用します。

高血糖は、それが一時的、単発的なものであれば大きな問題はありません。

しかし長期に持続したり、くり返すと、高血糖による障害が生じます。

大量の糖が生体内にあると、血液の浸透圧が上がり、身体の恒常性が乱されます。

また、糖が過剰にあると、常と異なる代謝経路に入った糖の代謝産物が、細胞障害や血管障害を引き起こします。

人の体にとっては、低血糖も困るし、高血糖も困るのです。

そのため、血糖は狭い範囲でしっかりとコントロールされているわけです。