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【10】-3 2型糖尿病 ⑧ 2型糖尿病と摂食障害 その5 過食と絶食、過食嘔吐は生体内のリズムを崩す

すでに述べましたが、人の身体の糖代謝は24時間単位で調節されており、これが通常のリズムです。

つまり、起床時約6時間ごとに3度食事を摂り、夜間や睡眠時12時間ほどは絶食期間となり、それに合わせてさまざまな神経やホルモンが競合・協調して多臓器に働き、24時間かけて元の状態に戻る、ということをくり返しています。

摂食障害の症状である過食は、夜間に多く、強い過食衝動の前には睡眠時間を削って症状を出す方も少なくありません。

過食後の絶食や節食、夜間の過食や過食嘔吐は、もともと24時間単位で調節されている糖代謝のバランスをめちゃくちゃにしてしまいます。

食べ物を消化吸収し、栄養として代謝するとき、人の身体には、消化管の自動能、自律神経調節、消化管ホルモンによる消化酵素の分泌、糖代謝に関わるインスリンなど各種ホルモンの分泌など、さまざまな機構がお互いに競合したり協調したりして、絶妙なバランスでもって働いています。

それらは、私たちが歩きたいときに足を動かすというような運動(随意運動)とは異なり、私たちの意思ではどうにもならない類のものです。

それらが良好に働くのに最も良いのは、生体内の一定のリズムを崩さないことです。

この場合、食べ物の消化吸収やその代謝が順調に行われるためにも、規則正しい食生活や十分な睡眠時間をとることが重要です。

過食やそれに伴う節食や絶食、過食嘔吐は、そのリズムをめちゃくちゃにしてしまいます。

不規則な過食、夜間の過食や過食嘔吐は、1日単位で調節されている糖代謝のバランスを崩し、糖代謝に多大な影響を与えるはずです。

糖代謝のバランスはインスリンやグルカゴン、コルチゾールなどのホルモン、自律神経系が関わっています。

糖代謝のバランスが崩れると、高血糖や低血糖が生じる危険があります。

ひとたび高血糖を経験してしまうと、それが次の高血糖の下地となり、くり返す高血糖により血管障害、細胞障害が深刻となっていくでしょう。

【10】-3 2型糖尿病 ⑦ 2型糖尿病と摂食障害 その4 過食、過食嘔吐と経年増加

また、ずっと過食と絶食の帳尻のあった状態ではいられません。

過食症、摂食障害は依存症でもあり、依存症の症状は徐々に増えていくものです。

過食症であれば、過食食材の量も、過食に要する時間も増えていくのが当たり前なのです。

今は過食と絶食で帳尻を合わせていても、ゆくゆくはそのバランスが崩れ、肥満、糖尿病への道を歩くことになるかもしれません。

過食嘔吐に関しても同じようなことが言えます。

過食しても吐いてしまえば、吸収される栄養に対してのインスリンの分泌は、ただ過食するだけよりも少なくてすむでしょう。

しかし摂食障害、過食症というものは経年増加していき、徐々に過食嘔吐の回数、量、時間が増えていきます。

年齢とともに嘔吐しにくくなる方もいます。

過食と嘔吐のバランスが崩れて過食に傾けば、やはり肥満、糖尿病を発症しやすいでしょう

過食症、摂食障害であれば、過食という症状に伴ってインスリンがより必要になり、それが膵臓のインスリンの枯渇を早くに招くことになります。

また、過食は高血糖や低血糖を招く危険があり、それによりインスリン抵抗性の増強、膵臓のインスリンの分泌低下が起こり得ます。

過食と絶食をくり返している場合、その症状自体が非常に危険な上、インスリン抵抗性がついてさらに高血糖に陥りやすくなるでしょう。

【10】-3 2型糖尿病 ⑥ 2型糖尿病と摂食障害 その3 過食と絶食の危険

摂食障害には、過食と絶食あるいは節食をくり返している一群があります。

過食した後に、過食した分食事を摂らないようにするのですが、無理やり過食を抑え込んでいるうちに過食衝動が爆発し、再び過食にうちのめされる、というパターンです。

例えば、2日かけて食べる食事量を1回の過食で食べてしまい、以後1日半~2日ほとんどなにも食べないとしましょう。

算数的に考えると、結果的な食事量が同じであれば、必要とするインスリンはほぼ同量と考えられます。

人の体は簡単な算数で処理できるほど、単純ではありません。

摂食障害や過食症であれば、絶食や極端な食事制限の後に爆発的に過食してしまうのはよくあることです。

これは歴史が証明していることですが、飢餓状態にある人がいきなりお腹いっぱい食べてしまうと、死亡する危険があります。

絶食後に過食してしまうのは、非常に危険なことです。

また、絶食中、身体は糖ではなく主に脂肪酸をエネルギー源として利用します。

脂肪酸は効率的にエネルギー産生できる利点がある一方で、インスリン抵抗性を上げる作用を持ちます。

この性質は、食料不足の環境にいる人にとって、インスリン抵抗性がつくことで少ない食料でも血糖が保たれやすくなるため、利に働きます。

しかし、過食してしまう人にとってはアダとなります。

過食という症状自体が、血糖の異常な上昇をまねきうるものです。

絶食や節食の後に過食をすると、脂肪酸によるインスリン抵抗性の影響も重なり、血糖が非常に上がりやすくなるでしょう。

身体が飢餓モードに入った状態での過食は非常に危険な上に、高血糖にもなりやすく、それは将来の糖尿病につながるでしょう。

糖毒性といって、高血糖それ自体にもインスリンの分泌を下げ、インスリン抵抗性を上げる作用があります。

一度でも高血糖を経験すると、それがまた次の高血糖をまねく下地をつくるのです。

過食症・摂食障害の方が一度でも高血糖を経験すると、次の過食の時、高血糖に陥る危険がさらに上がります。

【10】-3 2型糖尿病 ⑤ 2型糖尿病と摂食障害 その2 過食がまねく高血糖、低血糖

摂食障害の症状は、過食のみであったり、過食と絶食をくり返したり、過食嘔吐であったり、チューイングを伴ったり、と非常に多彩です。

いずれのパターンでも、過食を認める場合、高血糖の危険があります。

今までに説明してきたインスリン分泌枯渇や高脂血症によるインスリン抵抗性の増強は、過食による肥満が見られたり、過食嘔吐の方でも過食が勝っている場合に、より起こりやすいものです。

では、過食や過食嘔吐があっても、やせている方ならば安心なのでしょうか。

残念ながらそうではありません。

過食という行為それ自体に、高血糖を誘発したり、膵臓のインスリン分泌枯渇を招く危険があります。

食事に伴う血糖の上昇は、食事の種類、食塊が小腸に到達する量とスピード、小腸に到達した食塊のこなれ具合(消化具合)などが関係します。

私たちが食事をすると、食べ物は一旦胃でストックされ、ある程度こなれた状態になってから、少しずつ小腸に送りだされます。

胃にストックされた食べ物が、こなれた分だけ少しずつ小腸に送られてこそ、胃、小腸、膵臓など消化吸収に携わる多臓器が、穏やかに連動して働きます。

普通の人なら、食事に伴う血糖の上昇具合は、ほぼ食事の内容によるでしょう。

過食症では甘くてやわらかい菓子パンなど、血糖が上がりやすいような食材を好むことが多いですが、問題はそれだけではありません。

過食行為によって消化吸収に携わる多臓器の連動が狂い、高血糖や低血糖をきたす危険があります。

過食によって、急激に胃が広げられたり、胃にある食塊が小腸に到達する量やスピードが狂ったり、ほとんどこなれていない食塊が小腸に送り込まれたりする場合があります。

小腸に急激にたくさんの食塊が送りこまれてきたり、その食塊がほとんどこなれていない状態だった場合、消化管ホルモンの異常分泌が引き起こされます。

これは、胃切除後の早期ダンピング症候群の病態と似ています。

過食後に、腹痛の他に、だるさや眠気などが生じる方がいますが、これは早期ダンピング症候群で見られる症状と同じです。

消化管ホルモンの異常分泌は、消化管の動きを乱れさせて腹痛や便通異常を起こし、また、血管内の水分を小腸内へと多量に奪うため、脳の血流が減って、眠気、だるさなどが生じます。

また、これらの消化管ホルモンの中に、小腸の血管拡張を引き起こすものがあります。

栄養素を身体に吸収するための臓器である小腸に血管拡張が起こると、吸収する糖の量も一気に増えて、血糖値の異常な上昇、高血糖が起こり得ます。

急激な血糖値の上昇に伴い、インスリンの過剰な分泌が誘発された場合、過食してすぐは高血糖でも、食後1~2時間で低血糖となってしまう、反応性低血糖という病態に陥る場合もあるでしょう。

これは、胃切除後の晩期ダンピング症候群の病態と似ています。

過食嘔吐があると、嘔吐行為によって後々吸収できる糖が減り、反応性低血糖が強く出る可能性があります。

反応性低血糖は、いわばインスリンの無駄遣いで、これを経験すればするほどに膵臓のインスリン分泌枯渇をまねくでしょう。

過食の直後にお腹がぐるぐる動く感じがして痛かったり、すごくだるくて眠くなったり、そうかと思うと1~2時間後には冷や汗が出てきて手が震えたり、このような一連の症状を経験したことがありますか?

その場合、過食に伴って高血糖となったり、その後低血糖となっている可能性があります。

摂食障害、過食症で見られる過食という行為には、消化管の連動異常、ホルモン分泌異常を引き起こし、血糖の吸収過程に異常を生じて、高血糖、低血糖になる危険があります。

そしてこれはその方の体格、肥満であろうと著しくやせていようと、関係なく起こりうることです。

これを予防するには、過食をやめるしかありません。

しかし過食衝動に伴った過食は意思で止められるものではないのです。

【10】-3 2型糖尿病 ④ 2型糖尿病と摂食障害 その1

摂食障害を患っている方が過食の果てに2型糖尿病となることは十分ありうることです。

意思の力ではどうにもならないのが過食衝動だからです。

過食はいわばインスリンの無駄遣いのようなもので、早々に膵臓からのインスリン分泌枯渇を招く可能性があります。

また、過食に伴い高脂血症や内臓脂肪の蓄積が起こると、インスリン抵抗性が増します。

また、摂食障害は非常に病識に乏しい病気です。

2型糖尿病を発症する方々の中に、無自覚な摂食障害がかなりの数含まれているかもしれません。

これといった自己管理をせずにだらしなく生活して、どんどん肥満していく人は、過食症の可能性があります。

お腹がいっぱいという感覚をあてにしていると、いつまでも食事を止められなかったり、だらだら食べてしまう背景には、過食衝動があります。

糖尿病なのに食事制限できないあなたは、だらしないのでもなんでもなく、過食症、摂食障害という病気なのかもしれません。