摂食障害のホームページ

*

タグ : 糖尿病

【10】-6 糖尿病と摂食障害のカンケイ 解決策

糖尿病と摂食障害は、非常に取り合わせの悪い病気で、お互いがお互いの病状を悪化させるということを説明してきました。

糖尿病の中でも、2型糖尿病、妊娠糖尿病について言えば、過食や過食嘔吐は発症要因のひとつです。

おそらく、この悪循環を断ち切るのに最も良い方法は、できるだけ早く、我慢せずに、過食や過食嘔吐症状を止めることです。

すでに経験済みの方もいるでしょうが、自己流で症状を止めようとしたり、入院するなどして無理やり症状を抑えつけると、その後、倍返しのように過食や過食嘔吐が増えるでしょう。

摂食障害の患者数に比し、摂食障害に適した治療を行える医療機関が圧倒的に少ない状況が続いています。

その上、摂食障害に向けた専門治療の多くが、「過食を抑えつけない」ことを前提としており、「我慢せずに過食や過食嘔吐症状をいち早く止める」ということを目的としていません。

早く、楽に、過食を止めるための方法論が無ければ、この前提も致し方のないことでしょう。

できるだけ早く症状を止めることを目的としていない治療では、過食や過食嘔吐が糖尿病の病状を刻一刻と悪化させるのを待つだけになります。

治療の成果が表れるまでに長い時間がかかるのは、たとえ摂食障害単独であったとしても、非常につらく、苦しいものです。

そういった治療を続けられる摂食障害の患者さんは、むしろ少数派でしょう。

1回1回の過食や過食嘔吐が、糖尿病合併症の発症や進行に関わっている方にとって、過食や過食嘔吐症状を、我慢することなく、いち早く止められるかどうかは、それこそ死活問題です。

糖尿病の発症を予防したい、妊娠糖尿病を経験した、すでに糖尿病を発症していて、それでも止まらない過食や過食嘔吐に苦しんでいる方は、我慢せずに過食をいち早く止められる治療機関を見つけることです。

摂食障害治療において、我慢せずに症状を止めることは非常に重要なことですが、糖尿病などの身体疾患を合併している場合、抑えつけずにいち早く過食を止めることは、急務です。

過食衝動を無くすことで、いち早く過食を止めることができ、我慢することなく、自然に、過食や過食嘔吐は止まり続けます。

【10】-5 妊娠糖尿病 ② 摂食障害妊婦さんは妊娠糖尿病になりやすい?

欧米人と比して、日本人はインスリン抵抗性がつきやすく、膵臓のインスリン分泌能が低い特性があります。

日本人としてのこの特性は、2型糖尿病のみならず、妊娠糖尿病をも発症しやすいことを示しています。

ここに過食症、摂食障害が加われば、2型糖尿病の発症、妊娠糖尿病の発症のリスクがさらに上がるでしょう。

過食による肥満があれば、膵臓のインスリン分泌消費が上がっている証拠で、それによる内臓脂肪の増加や高血圧、高脂血症はインスリン抵抗性を上げるでしょう。

やせていたとしても、過食や過食嘔吐行為は、高血糖や低血糖を引き起こしうるもので、その場合インスリンの分泌消費が上がり、インスリン抵抗性が上がりやすい、と言えます。

過食や過食嘔吐があると、妊娠時には妊娠糖尿病を、将来的には2型糖尿病を発症しやすいでしょう。

妊娠糖尿病について詳しく知りたい方は、【9】-2 妊娠中期 ~後期 妊娠糖尿病 ①~⑧ をご覧ください。

摂食障害の女性が妊娠することについて詳しく知りたい方は、【3】 摂食障害女性の妊娠・出産・子育て、【9】 妊娠と摂食障害のカンケイ をご覧ください。

【10】-5 妊娠糖尿病 ① 概要

妊娠中の母体に高血糖を認め、お産の後には正常化するものを、妊娠糖尿病といいます。

母体の高血糖はお腹の子どもに影響し、赤ちゃんが生まれてから低血糖となりやすかったり、母体に比して大きすぎる赤ちゃんになったりします。

妊娠に伴い、母親の身体にはさまざまな変化が見られますが、糖代謝にも変化が起こります。

インスリン抵抗性が上がって、高血糖となりやすくなるのです。

これは、お腹にいる胎児にとっては、糖分豊富な血液が胎盤に届けられるため、利に働きます。

しかし母体にとっては、インスリン抵抗性がついた分、膵臓から普段よりたくさんのインスリン分泌が必要となります。

膵臓に妊娠で需要が増える分のインスリン分泌能力が無い場合、妊娠糖尿病が発症します。

妊娠糖尿病の場合、2型糖尿病を発症するカラクリとほぼ同じことが起こっています。

妊娠という一時的にインスリン抵抗性が増強した状態に対して、膵臓が余剰分のインスリンを分泌できない、ということです。

妊娠糖尿病の発症は、インスリン抵抗性のつきやすさや、膵臓のβ細胞の疲弊しやすさを表すものです。

事実、妊娠時に妊娠糖尿病を発症した方は、将来的に2型糖尿病となりやすいことが知られています。

私が医学生の頃には、妊娠糖尿病は妊娠時だけに見られる特殊な病態で、その後は予後良好な病気と習いました。

現在では、妊娠糖尿病の発症は、将来の2型糖尿病予備軍ということで、慎重に内科で経過観察されるべきものです。

【10】-4 1型糖尿病 ② 1型糖尿病特有の摂食障害の病理に根差した症状 insulin omission

摂食障害の病理に根差した、1型糖尿病に特有の症状があります。

1型糖尿病は膵臓がインスリンをほとんど分泌できないので、治療にはインスリンの皮下注射が必要になります。

1型糖尿病と摂食障害を合併した場合、その、本来投与すべきインスリンの量を意図的に減らしたり、投与しなかったりすることがあります。
(insulin restriction、insulin omission)

そうすることで体重を減らそうとする試みで、その背景にはやせ衝動があるでしょう。

過食を無かったことにしたい、栄養分とせずに出してしまいたい気持ちがあれば、それは排出衝動です。

必要な量のインスリンを打たなければ、余剰の栄養分が蓄えられず、脂肪が蓄積することは無いかもしれません。

しかし、高血糖となり、場合によっては糖尿病性ケトアシドーシスに陥り、意識を失うこともあります。

insulin omissionをすればするほど、糖尿病としての病態は悪化していき、糖尿病合併症の発症が早まったり、進行しやすいでしょう。

この事実を知っていても、insulin omissionするのであれば、その方は間違いなく摂食障害です。

意思の力ではどうにもならないのが過食衝動、やせ衝動、排出衝動だからです。

過食は過食衝動がもとになるもので、患者さん本人が糖尿病の病態が悪化すると知っていてすら、止められるものではありません。

そして糖尿病の病態の悪化や糖尿病合併症への恐れや不安は、次の過食、過食嘔吐をまねく大きなストレスです。

もともと過食や過食嘔吐は、高血糖をまねきやすく、インスリン抵抗性の悪化、膵臓β細胞のインスリン分泌疲弊をきたしやすいものです。

1型糖尿病を合併する摂食障害の方の死亡率は、摂食障害単独より、また、1型糖尿病単独より、高いという報告もあります。

これは、過食や過食嘔吐、insulin omission、insulin restrictionが、糖尿病の病態の悪化を招き、またそれが摂食障害の病状を悪化させる、という悪循環が結果にあらわれたものです。

【10】-4 1型糖尿病 ① 1型糖尿病があると摂食障害を発症しやすい?

1型糖尿病も、摂食障害と関係の深い病気です。

1型糖尿病は小児期に発症することが多い病気です。

1型糖尿病を児童期~思春期に発症した女性は、摂食障害を発症するリスクが高い、というデータがあります。

治療として食事療法が必要になりますが、その食事療法に伴うストレスなども要因として挙げられているようです。

摂食障害は小児期に発症することもまれではありません。

1型糖尿病という大きなストレスを前に、過食、拒食、体重へのこだわりなど、摂食障害の典型的な症状が早々に外在化するのかもしれません。

また、1型糖尿病であれば、定期的に内科や小児科など医療機関を受診するものです。

ご家族も相談しやすい環境があるでしょうし、患者さんの様子から医療従事者が摂食障害の兆候を見つけやすいでしょう。

摂食障害は病識に乏しい反面、自分自身の食行動の異常について何かがおかしいと感じているものです。

過食や過食嘔吐については、症状を強く恥じて、絶対に周りにばれないようにと振舞うことも多いのです。

摂食障害単独では、見逃され、見過ごされていたものが、1型糖尿病という基礎疾患があることで、早期発見されているのかもしれません。

これは恐ろしい想像ですが、すべての摂食障害が明るみに出た時、1型糖尿病に摂食障害を発症する率と摂食障害の発症率にさほど差が無い可能性もあります。