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タグ : 薬物療法

【15】-3 摂食障害の専門的な治療について ⑤ 摂食障害の薬物療法

・薬物としては、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの抗うつ剤が過食嘔吐を減らす効果があると言われています。ただし、長期の効果については不明で、薬物だけでの完治は困難だと考えられています。
(「摂食障害情報ポータルサイト(HP) 一般の方へ 摂食障害について 摂食障害はどんな病気? 神経性過食症 治療」より抜粋)

・しかしながら、現状では、本症は心療内科的な対応しかできない難治性疾患であり、特効的な薬物はありません。
(「難病情報センター(HP) 中枢性摂食異常症 3.研究班としてトピックス的な話題など」より抜粋)

このように、過食・過食嘔吐・チューイング症状に対する薬物療法の効果ははっきりせず、現状、摂食障害の特効薬はありません。

過食衝動を無くしてしまう薬は無いのです。

精神科領域の薬物が開発されてきた歴史をひも解けば、薬物への過剰な期待はかえってアダとなることが分かると思います。

しかし、精神科領域の薬物療法は、摂食障害に併存するうつ病など、その他の病状に有効な場合もあるでしょう。

【15】-3 摂食障害の専門的な治療について ① さまざまな専門治療

摂食障害の代表的な専門治療として、認知行動療法、対人関係療法、精神療法(力動的精神療法、精神分析的精神療法、支持的精神療法)、家族療法、薬物療法があります。

治療者の指導のもと、セルフヘルプ用の一冊の本をもとに、患者さん自らが症状の改善に取り組む方法(ガイデッドセルフヘルプ法)もあります。

ガイデッドセルフヘルプ法、認知行動療法、対人関係療法は、過食・過食嘔吐などの症状を軽減させる治療効果がある、と科学的に認められたものです。

摂食障害の患者さんが未成年の場合、家族療法の効果も期待できますが、日本では治療者、家族療法家が絶対的に不足しています。

摂食障害のための認知行動療法、対人関係療法は、数か月間~半年を目途とした、期間限定の心理療法です。

摂食障害の根本的な解決を望むのであれば、さらに長期間の精神療法、カウンセリングが必要と言われています。

過食・過食嘔吐・チューイングなどの摂食障害の症状に対して、それぞれの治療で、具体的にどのように対応するのか、さらに詳しく見ていきましょう。

【15】-2 摂食障害医療 過食・過食嘔吐・チューイングへの取り組み ① 患者さんへの負担が大きすぎる医療の現状

摂食障害の専門的な治療では、過食・過食嘔吐・チューイングなど症状への具体的な取り組みはどうなっているのでしょう。

以下は、厚生労働省のホームページや、患者さんとご家族向けのハンドブック、日本摂食障害学会の監修する摂食障害治療ガイドライン、医師や医療従事者向けの参考書・専門書から抜粋した文章です。

厚生労働省のホームページ、患者さん向けのハンドブックは、摂食障害を抱える患者さんやご家族に正確な情報を提供するためのものです。

摂食障害治療ガイドラインや医学用専門書は、摂食障害医療の質の向上のため、医師など専門家が利用するものです。

過食を止める方法はあるか
ベテランの治療者ですら、(中略)それに対する名案は持ち合わせていない。
(「摂食障害の最新治療」 p91 第5章 精神科の立場から より抜粋)

ご本人は「過食を止めたい」と希望することが多いですが、過食以外がほとんど絶食の状態で過食を止めるのは難しいことです。
最初は「過食ゼロ」よりも、食事の規則性やコントロール感を取り戻すことを目指します。
このために、毎日の生活パターンを把握し、生活のリズムを決めます。
その上で、薬物療法、心理療法(認知行動療法など)を行います。
(「摂食障害情報ポータルサイト 一般の方へ 摂食障害について 摂食障害はどんな病気? 神経性過食症 治療」より抜粋)

治療ってどう考えたらいいの?
治療のゴールは、「症状をゼロにする」というよりは、「まずは、自分の体に命の危険が及ぶことなく、日常生活でやりたいことをやりたいようにやっていくための適切な体重、食行動を維持する」と考えて取り組んでください。
(「摂食障害ハンドブック(東京大学医学部付属病院心療内科作成)」p 13)

BN(神経性大食症)の患者さんの場合、むちゃ食いを止めようとするのではなく、その前提にある”食事制限”することをいかにして減らすかが鍵となります。・・・規則正しい食事の獲得は、AN(神経性無食欲症)にもBNにもその回復に第一に必要となる基本です。
(「厚生労働省ホームページ みんなのメンタルヘルス 患者さんへのアドバイス」より抜粋)

4 栄養指導および栄養療法の指針 2) 外来での栄養指導
④ 自己嘔吐や下剤の乱用等の排出行為はさらにむちゃ食いを増長するので、排出行為を減らすよう指導する。
(「神経性食欲不振症のプライマリケアのためのガイドライン(2007年) 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 中枢性摂食異常症に関する調査研究班」 より抜粋)

BN(神経性大食症)は、自分自身での症状への取り組みがなければ治療できない疾患です。
(「摂食障害治療ガイドライン」 p 77 第7章 さまざまな治療 7-1 セルフヘルプ援助 より抜粋)

このように、過食やむちゃ食いをすぐに止められる方法はなく、過食を減らしたければ、規則正しく食事をとること、食事制限を減らすなど、自分自身で症状に取り組むことが大切だと記されています。

1日3回、時間を決めて食事を摂り、1日2回の間食を摂り、過食後も食事を抜かないように、などが指導の一例です。

嘔吐行為、下剤や利尿剤の誤用に至っては、その害を患者さんに理解してもらうことで、減らしたりやめたりすることを促す、とあります。

これらがどんなに難しく、それこそ症状の増加をまねくほどストレスがかかり得ることか、経験者にしか分からないでしょう。

不規則な食事や絶食は過食を悪化させうること、嘔吐行為、下剤や利尿剤による身体への害など、病気に関する正しい知識を得ることは大切ですが、それでも症状がどうにもならないからこそ、病気なのです。

慢性・遷延化した摂食障害の患者さんでは、なおのこと、食事のリズムを整えたり、害を知ることで下剤をやめようとすることは、難しいでしょう。

なぜならば、そうした方が良いことは100も承知の方がほとんどだからです。

知っていても、できないから病気なのです。

患者さん自身に食行動の改善に取り組んでもらうことは、時に大きな負担となり、尋常ならざる努力を強いることになるでしょう。

ニュアンスを取り違えた患者さんが症状を我慢してしまえば、後の症状の爆発に苦しめられるのもまた患者さん自身です。

患者さんに多大な負担、努力を背負わせなければ、治療できないというのは、摂食障害がそういう病気だからなのではありません。

現状の治療体制の問題です。

治療する際に患者さんの負担を少しでも軽くするのは、摂食障害医療に携わる医療者、治療者が、取り組み続けるべき課題です。

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