摂食障害のホームページ

*

タグ : 医療関連

【9】-5 妊娠全経過と摂食障害のカンケイ ⑥ まとめ

摂食障害を患った状態で妊娠してしまった妊婦さんに出来ることが二つあります。

ひとつは、しかるべき治療機関で、なるべく早く、がまんせずに摂食障害の症状を止めることです。

過食・過食嘔吐・チューイングなど摂食障害の症状は、妊娠分娩経過に大きく影響します。

しかし、やみくもに自己流で症状を止めても、我慢が爆発して余計に症状が増えるでしょう。

ストレスがたまって早産につながるなど、妊娠経過がさらに不安定になる可能性があります。

自分では症状を止められないから病気なのです。

しかるべき治療機関で、がまんすることなく症状を止められれば、症状に関する罪悪感やストレスから解放されます。

過食嘔吐などの物理的な圧迫が無くなることは、お腹の赤ちゃんにとって喜ばしいことです。

そればかりか、母親の心理状態が好転することで妊娠分娩経過が安定し、お腹の赤ちゃんの安心や安全につながります。

がまんせずに摂食障害の症状を止められる治療機関を頼ってください。

もうひとつは、産婦人科医に摂食障害の症状について伝えることです。

産婦人科医が、あなたのことを、なんらかのリスクがある妊婦さんであると認識している場合、なにかあったときに、より迅速な対応につながります。

産科救急疾患は、迅速な対応が母児の予後を大きく左右します。

摂食障害は、医療従事者にすら理解が得られにくい病気です。

摂食障害を理解してくれる産婦人科をみつけることは、非常に難しいことです。

摂食障害にまつわる妊娠分娩経過の異常について知識のある産婦人科医をみつけましょう。

【9】-5 妊娠全経過と摂食障害のカンケイ ⑤ まとめ

摂食障害合併妊娠は、ハイリスク妊娠です。

重篤な産科合併症の発症にも十分留意した周産期管理を行う必要があります。

私は摂食障害を患っている方に妊娠を勧めません。

摂食障害が治るまでは避妊をするように勧めています。

その理由として、以下のようなものがあります。

妊娠・出産・子育てが摂食障害の症状を悪化させる可能性が高いこと。

妊娠分娩経過に異常をきたしやすく、母児ともに危険に陥りやすいこと。

生まれてくる子どもに生活習慣病の素因を与えてしまうことがあり、その素因が増幅されて子孫に受け継がれる可能性があること。

生まれてくる子どもに摂食障害などの依存症を受け継がせてしまう可能性が高いこと。

しかし摂食障害を患っている方のなかには、その事実をよく知らないままに妊娠してしまう方もいます。

摂食障害に関して、医療従事者の対応が統一されていないのも一因でしょう。

また、治すことをあきらめてしまっている摂食障害患者さんが多いせいもあるかもしれません。

医療従事者はもちろんのこと、摂食障害の患者さん本人も、摂食障害がある上での妊娠がいかに危険なものなのかをもっとよく知る必要があります。

【9】-4 妊娠にふさわしい体格・体重増加 ⑤ 日本人妊婦の体重増加管理は難しい?その2

安定した妊娠分娩経過を過ごすため、また、赤ちゃんの健康のため、妊娠中の体重増加不良は避けなければなりません。

しかし、日本人としての体質を考慮したり、余力が少ないと思われる女性では、妊娠中の体重増加過剰は妊娠合併症を誘発することになるでしょう。

妊娠中の体重増加過剰がいかに不利に働くかを知っている産婦人科の医師は多いと思います。

妊娠中の体重増加不良がいかに有害となるかを知っている産婦人科の医師は少ないかもしれません。

一般の産婦人科医が診る赤ちゃんは、元気に生まれ、生後しばらくで退院していく赤ちゃんがほとんどです。

妊娠中の体重増加不良があったものの、ちょっと小さい以外は何の問題も無いと産婦人科医が判断した赤ちゃんが、いまごろ生活習慣病で苦しんでいるかもしれません。

Barker仮説やDOHaDの概念は、内科医、小児科医は勿論のこと、産婦人科医の間でも十分認知され、検討されるべき事柄だと思います。

産婦人科医がBarker仮説、DOHaDについて十分認知していれば、妊婦健診での体重管理には「ゆるやかな指導」が成されているはずです。

母親の「やせ」や、妊娠中の体重増加不良が及ぼす害について知っていても、母親の精神的な安定を優先し、敢えて伝えない医療従事者もいるかもしれません。

母親の「やせ」や妊娠中の体重増加不良が、妊娠合併症や母親のもともとの病気によるものである場合、その傾向は顕著になるでしょう。

生活習慣病の一次予防、二次予防のためには、子宮内低栄養の有無が重要な情報となります。

医師の目から見て、明らかに子宮内低栄養の影響で低出生体重児を出産したと思われる母親に対しては、情報提供が必要でしょう。

【9】-4 妊娠にふさわしい体格・体重増加 ③ 「ゆるやかな指導」が趨勢

新生児の出生体重はこの20年間減少の一途をたどってきました。

このことは、すべての妊娠女性において妊娠中の体重増加量が減少していることと関係があるはずです。

日本では、過去の妊婦健診指導で、かなりストイックに妊婦さんの体重管理が行われてきた経緯があります。

妊娠中の体重増加と妊娠高血圧腎症(かつての妊娠中毒症)との関連が強調されていたためです。

妊娠中の体重増加量が多すぎると、妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症を含む概念)の発症率が上がることは事実です。

しかし、妊娠中の体重増加量が少なすぎても、妊娠高血圧症候群の発症率が上がるのです。

妊娠中の体重増加を抑制しても、妊娠高血圧症候群を予防できない、といわれています。

現在、妊娠高血圧腎症のリスク因子としてはっきりしているのは、母体が高年齢であることと、腎疾患の既往があることです。

すべての妊婦さんに、ストイックに妊娠中の体重管理をすることはナンセンスです。

意味がないどころか、妊娠中の体重増加不良が子宮内の低栄養を招くことを考えれば、有害とすらいえます。

実際の臨床の場では、妊娠中の母体の体重増加に関して、さまざまな方針の産婦人科があることでしょう。

しかし、妊婦さんの妊娠中の体重管理に関して「ゆるやかな指導」を行うことが現在の流れです。

海外では、妊娠に伴う体重増加の上限を、特に設けていない医療圏もあるほどです。

母親に、妊娠に伴う負担を背負うだけの余力が十分あれば、本来は体重が多少増えすぎても問題ないのでしょう。

【9】-3 Barker仮説とDOHaD ⑲ 生活習慣病の一次予防

妊娠する前から、ひいては妊娠するまでの女性の全人生の栄養状態が良好であればあるほど、身ごもる子どもの将来は明るくなります。

ここは先進国で、物質的にはその条件を十分満たしうるところです。

妊娠する前までの女性の人生に「やせ」がないこと。

妊娠する前から妊娠中にかけて、多彩でバランスの良い食生活が送れること。

これでその女性は、将来身ごもる子どもに健康な一生を、さらには次の世代の健康までもプレゼントできます。

これは、母親が子どもにしてあげられる最高のプレゼントのひとつです。

妊娠前から妊娠中にかけて母親となる女性の栄養状態を良好に保つことは、生活習慣病の究極の一次予防になります。

妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症を除くと、先進国で母親が栄養状態を良好に保てない代表的な疾患に摂食障害があります。

摂食障害は女性に多い病気です。

女性の思春期頃から発症し、その後の慢性化も少なくありません。

摂食障害となることで、栄養状態が不良となり、それはその女性の卵子にも大きな影響を及ぼすでしょう。

摂食障害は一旦回復しても、容易に症状が再発することでも知られています。

摂食障害の再発率の高さは、根本的な治療が成されていないことを示しています。

高い医療水準を誇る日本の医療現場でさえ、根本的な治療法が分かっていない病気なのです。

日本では少子高齢化が進んでいます。

少数精鋭となるべき次世代の健康を守るためにも、摂食障害の根本的な治療が必要です。