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【12】-1 摂食障害と万引きのカンケイ はじめに

常習窃盗を犯す人々の中に、精神障害による病的症状として窃盗・万引きをくり返してしまう一群があります。

摂食障害・過食症の患者さんの中にも、万引きをくり返している方がいます。

摂食障害でくり返される窃盗・万引きは、摂食障害の独特の心性と結びついた病的症状のひとつでもあります。

窃盗・万引きは犯罪ですが、摂食障害でくり返される万引きは、病的精神状態の関与無くして語れません。

常習窃盗を病気として捉え、治療の対象としている専門の治療機関は、日本では稀です。

摂食障害単独であっても、一般的な医療機関からは避けられたり、満足な治療が受けられない現状があります。

摂食障害・過食症にくり返す万引き(常習窃盗)まで合併した場合、それに適切に対応できる医療機関は絶望的に少ないと言えるかもしれません。

摂食障害の方に見られる窃盗・万引きは、司法もからむ非常に複雑な問題で、解決への行程は困難を極めています。

【11】-2 摂食障害とアダルトチルドレンとしての特性 ①

アルコール依存症者の親がいる家族では、その子どももアルコール依存症を発症しやすいことが広く知られています。

依存症の性質は親から子へ受け継がれうるものですが、すべてが目に見える形で受け継がれるわけではありません。

アダルトチルドレンとは、もともとアルコール依存症の治療現場から発生した概念です。

アルコール依存症者の夫から離れられない妻に注目すると、その妻の多くがアルコール依存症者の娘であったという事実が最初にありました。

狭義には、アダルトチルドレンはアルコール依存症者のいる家庭で子ども時代を過ごした大人のことです。

広義には機能不全家族の中で子ども時代を過ごした大人です。

アルコール依存症のように養育者に依存症の問題があったり、あるいは病気などで養育者が健常な親として機能できない家族が機能不全家族です。

アダルトチルドレンとは、「生きづらさ」を自覚した大人がその理由をたどり、その後の人生をより豊かに生きるためのきっかけともなるもので、診断のための医学用語ではありません。

ほとんどのアダルトチルドレンの将来には、常に依存・嗜癖の問題が付きまといます。

嗜癖とは広義の依存症のことで、「わかっちゃいるけどやめられない」性質のものです。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤誤用、利尿剤の乱用も嗜癖の一種です。

アダルトチルドレンはアルコール依存症や摂食障害、多重嗜癖のベースとなりえます。

アダルトチルドレンとしての特性から、アルコールや薬物、ギャンブル、過食嘔吐などの嗜癖的行動をくり返し、深みにはまった時、病院・医療機関での治療が必要となります。

【10】-6 糖尿病と摂食障害のカンケイ 解決策

糖尿病と摂食障害は、非常に取り合わせの悪い病気で、お互いがお互いの病状を悪化させるということを説明してきました。

糖尿病の中でも、2型糖尿病、妊娠糖尿病について言えば、過食や過食嘔吐は発症要因のひとつです。

おそらく、この悪循環を断ち切るのに最も良い方法は、できるだけ早く、我慢せずに、過食や過食嘔吐症状を止めることです。

すでに経験済みの方もいるでしょうが、自己流で症状を止めようとしたり、入院するなどして無理やり症状を抑えつけると、その後、倍返しのように過食や過食嘔吐が増えるでしょう。

摂食障害の患者数に比し、摂食障害に適した治療を行える医療機関が圧倒的に少ない状況が続いています。

その上、摂食障害に向けた専門治療の多くが、「過食を抑えつけない」ことを前提としており、「我慢せずに過食や過食嘔吐症状をいち早く止める」ということを目的としていません。

早く、楽に、過食を止めるための方法論が無ければ、この前提も致し方のないことでしょう。

できるだけ早く症状を止めることを目的としていない治療では、過食や過食嘔吐が糖尿病の病状を刻一刻と悪化させるのを待つだけになります。

治療の成果が表れるまでに長い時間がかかるのは、たとえ摂食障害単独であったとしても、非常につらく、苦しいものです。

そういった治療を続けられる摂食障害の患者さんは、むしろ少数派でしょう。

1回1回の過食や過食嘔吐が、糖尿病合併症の発症や進行に関わっている方にとって、過食や過食嘔吐症状を、我慢することなく、いち早く止められるかどうかは、それこそ死活問題です。

糖尿病の発症を予防したい、妊娠糖尿病を経験した、すでに糖尿病を発症していて、それでも止まらない過食や過食嘔吐に苦しんでいる方は、我慢せずに過食をいち早く止められる治療機関を見つけることです。

摂食障害治療において、我慢せずに症状を止めることは非常に重要なことですが、糖尿病などの身体疾患を合併している場合、抑えつけずにいち早く過食を止めることは、急務です。

過食衝動を無くすことで、いち早く過食を止めることができ、我慢することなく、自然に、過食や過食嘔吐は止まり続けます。

【10】-4 1型糖尿病 ① 1型糖尿病があると摂食障害を発症しやすい?

1型糖尿病も、摂食障害と関係の深い病気です。

1型糖尿病は小児期に発症することが多い病気です。

1型糖尿病を児童期~思春期に発症した女性は、摂食障害を発症するリスクが高い、というデータがあります。

治療として食事療法が必要になりますが、その食事療法に伴うストレスなども要因として挙げられているようです。

摂食障害は小児期に発症することもまれではありません。

1型糖尿病という大きなストレスを前に、過食、拒食、体重へのこだわりなど、摂食障害の典型的な症状が早々に外在化するのかもしれません。

また、1型糖尿病であれば、定期的に内科や小児科など医療機関を受診するものです。

ご家族も相談しやすい環境があるでしょうし、患者さんの様子から医療従事者が摂食障害の兆候を見つけやすいでしょう。

摂食障害は病識に乏しい反面、自分自身の食行動の異常について何かがおかしいと感じているものです。

過食や過食嘔吐については、症状を強く恥じて、絶対に周りにばれないようにと振舞うことも多いのです。

摂食障害単独では、見逃され、見過ごされていたものが、1型糖尿病という基礎疾患があることで、早期発見されているのかもしれません。

これは恐ろしい想像ですが、すべての摂食障害が明るみに出た時、1型糖尿病に摂食障害を発症する率と摂食障害の発症率にさほど差が無い可能性もあります。

【9】-5 妊娠全経過と摂食障害のカンケイ ⑦ 「摂食障害合併妊娠」は氷山の一角

摂食障害の患者さんは、過食や過食嘔吐、チューイング症状がある自分を恥じる意識が強いようです。

摂食障害がある上で妊娠したことに後ろめたさを感じている場合もあります。

病識に乏しく、自分自身が摂食障害であることに気付けていない場合すらあります。

過食嘔吐をする以外に「変な癖」は自分に無いし、自分は全くの健康体だと思い込んでいる方もいることでしょう。

摂食障害の症状があっても、それについて産婦人科医に伝えることができる妊婦さんは、かなり少ないでしょう。

摂食障害合併妊娠であることを、産婦人科医・医療従事者が認識できないままに見過ごされているケースがかなりの数あるはずです。

摂食障害合併妊娠に伴う危険が、十分検討されることなく、見逃され、放置されているのです。

見逃され、放置されて、事態をどんどん悪化させてしまうのは、摂食障害の病的な心性に結び付くところです。

この摂食障害の病的な心性を、医療従事者が汲んでしまう事態を避けなればいけません。

患者さん自身も医療従事者も、摂食障害がある上での妊娠がいかに危険かを知る必要があります。

そして産科医師は、自分が何の問題も無いと思っている妊婦さんが摂食障害を合併している場合もある、と知っておいて下さい。