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【13】-3 摂食障害、過食症に見られる心理的特徴 アレキシサイミア ② アレキシサイミアは摂食障害、過食症の病状を悪化させる

アレキシサイミアは、危惧すべき状態です。

摂食障害、過食症の方は、過食、過食嘔吐、チューイング症状に自分の生活を奪われていることが、嫌で、つらくてたまらない、と本当は思っていても、全くそのように感じていない場合もあります。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用による悪影響で、心も身体も崩壊寸前だったとしても、本人だけがそのことに気付けません。

摂食障害、過食症に見られるアレキシサイミアは、病気の状態の苦しさを覆い隠し、病気の大変さを分からなくしてしまいます。

過食衝動に煩わされない状態で症状が止まってから、ようやく、自分がもう二度と戻れないと思うような苦しい状況にいたことに気付くケースは、多々あります。

一旦平静な状態になると、以前は「普通」と思っていた自分の状況を、「地獄」のように感じる方までいます。

アレキシサイミアは、摂食障害、過食症の病識の欠如、病気の深刻さの持続的欠如の悪化因子です。

医師、医療従事者にとって、問診や患者さんの訴えを聞くことは、診断・治療のためにも非常に重要なことです。

ところが、摂食障害の患者さんにアレキシサイミアがある場合、患者さんの心の底にある真のつらさや訴えを、患者さん自身が言葉にできないので、医師に伝えることができません。

そのために、患者さんと医師の間にすれ違いが生じやすく、そのすれ違いが治療離れという結果をまねきやすくなります。

摂食障害医療に携わる医療従事者、専門家、治療者は、アレキシサイミアの関与を念頭に置いて診療に当たるべきでしょう。

【12】-3 摂食障害に万引きをくり返す場合の対処方法 ② 医療従事者の対応

摂食障害を患っている方が、医療従事者に対する時、「いい子」としてふるまいやすいことを、医療従事者は常に念頭に置かなければいけません。

患者さんにとって、医師や看護師に万引きなどの行為について告白すること、現状を正確に申告することは、非常に難しく勇気のいることです。

摂食障害・過食症で治療のために通院している方自体、摂食障害全体からは少数派となるでしょう。

その中でも、主治医にくり返す万引きについて相談できている患者さんは、さらに少ないのではないかと推察します。

万引きは犯罪であり、それを助長するつもりは私には一切ありません。

万引きという犯罪行為に対し、成人した大人として責任を取ることは必須のことです。

摂食障害・過食症は病気だから、責任能力が無いと言っているわけでもありません。

摂食障害・過食症の方が万引きに至る心理的プロセスには複数の要因が存在し、司法面での責任能力の有無はケースバイケースとなるでしょう。

摂食障害・過食症の方が万引きに至るには、その多くに、ある程度筋道のあるストーリーがあります。

摂食障害・過食症だから、ただ「罪悪感なく」、万引きをするのではありません。

摂食障害・過食症の方は、ただ「けち」だから、万引きするのでもありません。

そこに至るには、その方たちなりの、苦しさ、耐えがたいほどのつらい感情があり、道筋があります。

摂食障害・過食症に携わる医療従事者は、患者さんが万引きをくり返している際、キーワードの羅列ではなく、その方個人のストーリーとして理解する努力をして欲しいと思います。

ありとあらゆる精神疾患には、治療者からの共感・支持的態度が必要不可欠です。

摂食障害・過食症も例外ではありません。

【12】-3 摂食障害に万引きをくり返す場合の対処方法 ① 治療体制の不確立

摂食障害・過食症の方が常習窃盗を合併した場合、患者さんはどうしたらよいのでしょう。

常習窃盗単一でも、その精神病理は非常に複雑かつ根深い性質のもので、社会的にも対応が確立されておらず、治療は難しいでしょう。

摂食障害医療に携わったことのある医療従事者であれば、摂食障害・過食症にくり返す万引き(常習窃盗)を合併しやすいことを知っています。

あなたが過食症で、万引きをくり返していて、主治医に万引きについて打ち明けたとします。

万引きに関して、主治医から糾弾されたとしたら、残念ながらその医師に摂食障害の専門知識は無いか、非常に乏しいと言わざるを得ません。

確かに、この問題は一朝一夕でどうこうできるものではなく、医師であったとしても思わず見ないふりをしたくなるほどのものかもしれません。

しかし、この問題を否認し、放置すればするだけ、一個人の中で、ひいては社会中に、この問題の根がさらに広く深くはびこっていくだけです。

摂食障害・過食症に見られるくり返す万引きは、医療面からは勿論、司法の面からも、社会的に解決に向けて取り組み続けるべき問題です。

解決にあせるのではなく、問題意識を持ち続けることです。

ひとつ、はっきりしていることがあります。

過食や過食嘔吐、チューイング症状を抑え込まずに、いち早く止めることができれば、摂食障害に見られる万引きの要因のふたつが無くなります。

抑え込まずに過食や過食嘔吐を止めるには、過食衝動を無くすことです。

過食衝動が無ければ、盗み食いをする必要が無くなり、ガマンせずに症状が止まり続ければ、少なくともそれ以後の過食費の心配は無くなります。

これによって、万引きを誘発しにくくなり、多重嗜癖としての万引き行為も改善する可能性があります。

摂食障害・過食症のみの場合、過食症状を抑えるのではなく、症状に一喜一憂せずに、あせらず治療に取り組むのも一つのやり方です。

対人関係療法がその最たるものですが、各種精神療法、カウンセリングの多くがそういったやり方を取っているものと思われます。

しかし、摂食障害・過食症に、くり返す万引きを合併している場合、悠長に構えている暇はありません。

止められない過食や過食嘔吐、チューイングが万引きを誘発し、回を重ねるごとに万引きは嗜癖化し、状況はどんどん悪化していくでしょう。

摂食障害・過食症に、くり返す万引きがある場合、一刻も早く、我慢することなく過食や過食嘔吐症状を止め続けることが緊急の課題なのです。

医学雑誌や専門書には、摂食障害・過食症の治療が、くり返す万引き行為に対して奏功する可能性について書かれています。

ここで重要なのは、患者さんが我慢することなく、かつ一刻も早く、過食や過食嘔吐、チューイング症状を止め続けることです。

過食衝動を無くせば、我慢せずとも、過食や過食嘔吐、チューイング症状は止まり続けます。

【12】-2 摂食障害・過食症に万引きを合併する過程 ③不安が強く、不安等ストレス対処行動の拙劣さをベースとした万引き

摂食障害・過食症では不安障害などの精神疾患の併存も多く、不安を強く感じやすい特性があります。

また、ストレス対処行動を適切に取ることができない一方で、ストレス耐性がほとんどなく、非常にストレスに弱いという特徴もあります。

肩で風を切って歩き、強そうに見えたとしても、その本質は非常に繊細で弱弱しいのです。

摂食障害・過食症の方にとって、抑えられない過食や過食嘔吐と、減っていく食料、減っていくお金、という自分自身の状況は、非常にストレスフルです。

過食をコントロールできないことへの敗北感や自責、減っていく食料や財産に対する耐えがたい不安や恐怖、自分では止められない症状を前に、さまざまな負の感情が摂食障害の方を襲います。

万引きは、社会的には犯罪ですが、どうしようもない状況に対する摂食障害の方なりの対処行動のひとつとも言えます。

この場合一番の問題は、摂食障害・過食症の症状である、意志では到底抑えられない、過食衝動に根差した過食や過食嘔吐なのです。

過食や過食嘔吐、チューイングを、我慢することなく止め続けることができれば、摂食障害・過食症の方が万引きをする理由のいくつかが無くなります。

過食衝動を無くすことで、我慢することなく、過食、過食嘔吐、チューイングは自然に止まります。

摂食障害・過食症の方が万引きに至る過程、【12】-2 ②、③のふたつは、そのようにして対処することが可能です。

しかし、現在の日本の病院・医療機関において、過食や過食嘔吐をガマンせずにいち早く止める、という手段がありません。

【12】-2 摂食障害・過食症に万引きを合併する過程 ②過食衝動をベースとした万引き 盗み食いから始まる・・・

これは、過食衝動が圧倒的なために、商品の盗み食いに至るなど、規範、社会的ルールを乗り越えて食べてしまう、結果としての万引きです。

摂食障害・過食症は食べることをコントロールできない病気です。

過食衝動があれば、食べてはいけないと分かりきっている他人の食べ物や、お店の商品を食べてしまうことも当然あり得ることです。

摂食障害・過食症の方が、お店の商品を盗んでまで食べる、人目のないところで盗み食いをする場合、その多くが過食衝動による行動でしょう。

盗み食いは、最初は家族のものを食べてしまうものから、同僚のものを食べてしまう、仕事場のお菓子・商品を盗んで食べる、など、徐々に犯罪性を帯びたものへと変化していくものと思われます。

過食衝動は到底意志でコントロールできるものではありません。

過食のための盗みが過食衝動に伴うものであれば、過食衝動が無ければ、盗み食いをしなくて済むわけです。

過食症・摂食障害の方が盗み食いをせずに済む一番の方法は、過食衝動を無くすことです。

残念ながら、医療機関・病院での治療やカウンセリングは、過食衝動にアプローチしたものではなく、また、過食衝動を無くしてくれる薬もありません。

過食が止まらなかったら死ぬしかないのかな