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現実から逃げるためのアルコール

摂食障害はアルコール依存症を合併しやすいことが知られていますが、私にはその理由がよく分ります。
過食嘔吐し続ける自分を、アルコールなしに直視できなくなっていきます。
過食嘔吐を続けたら身体がどうなるかという正常な見通しを持ってしまったら、耐えがたい不安に見舞われます。
上記の理由から、過食嘔吐症状とアルコールがセットになっていき、アルコールの量も次第に増えていきました。
過食しながら酔っ払って眠ってしまい、吐物が上がってきて目が覚め、あわててトイレに駆け込む、ということもよくありました。
依存症には依存症が合併しやすいものです。

私が過食嘔吐し始めたばかりの頃、医学書で摂食障害について調べたことがあります。
そこには、アルコール依存症の合併が非常に多いという記載がありました。
その頃の私は、過食嘔吐はしても、まさか自分はアルコール依存症にならないだろう、と思っていました。

摂食障害にしろ、アルコール依存症にしろ、「まさか自分が」と思う人ほど、その素因があるのかもしれません。

過食嘔吐をしている私は最低です。

「治したくても治さない。」私自身の経験

胸やけ、精神的ストレス、頻度の増加
過食嘔吐という、不自然で非生理的な行為を続けることで、身体にさまざまな不都合が起こります。
私自身の経験をお話しましょう。

過食嘔吐による身体の症状として、まず上部消化管症状がありました。
のどや口の中がひりつくような感覚、胸やけなどです。
口やのど(咽喉頭)、食道が、胃酸によって「やけど」するために生じる症状です。
また、嘔吐してしまったという罪悪感や、抑うつ、嘔吐を続けることによる食道がんへの不安・恐怖など、心の苦しさもよく覚えています。
依存症のセオリーですが、年を経るごとに過食嘔吐症状は回数、量、時間、すべて増加していきました。
(依存症の経年増加)

病識の欠如
摂食障害では、拒食症から神経性大食症への移行など病型が変化することがままあります。
私自身も、過食性障害(むちゃ食い障害)、摂食制限型の拒食症、過食・排出型の拒食症、神経性大食症(神経性過食症)を経験しました。
全経過で、病気である自覚は非常に薄かったと思います。

特に摂食制限型の拒食症のときは、医師免許をすでに持っていたにも関わらず、全く病識がありませんでした。
体重減少に伴って月経が来なくなっても、嘔吐していないのだから摂食障害は治ったと思っていました。
治ったと思いたかったのだと思います。

やせるため、あるいは太らないために嘔吐しているときは、何かおかしいことは分かっていました。
ただ、それを病気と自覚するというよりも、「やばいなぁ・・・。なんとかしないとなぁ。」という、ぼんやりとした捉え方でした。
病院や医療機関を受診することについて考えても、自分の医師という職業のことを考えると恥ずかしさや罪悪感などで行動できませんでした。
日々の仕事のいそがしさや、飲酒によってごまかしていました。
摂食障害を抱えている医療従事者の方々の中には、同じような理由でなかなか病院の治療に踏み切れない方もいると思います。

アルコール依存症の方が、自分のことを「アル中だ。」と周囲に公言しておきながら、病院や断酒会に通おうとしない状態と似ているかもしれません。

苦しいことが自分の「当たり前」
摂食障害にパーソナリティ障害が併存しやすいことはすでに述べました。
(→摂食制限型の拒食症)
パーソナリティ障害では病識を持ちにくいことが知られています。
摂食障害に典型的な思考パターンの芽は、パーソナリティが形成されるような段階から育くまれているのではないでしょうか。

私は過食嘔吐を発症する数年前から、満足して食べ終わるということがありませんでした。
お腹がいっぱいで苦しいのに、満足できずに食べ続けることがありました。
「これ以上食べると太るから。」という理由で食べるのをやめることはできても、満足して食べ終わることはできませんでした。
物理的にお腹がいっぱいなのに満足できない感覚は、「過食衝動」だったのでしょう。

私にとって、食べ物を選ぶときに「食べたいもの」ではなく、「より太らないもの」を選ぶことは極自然なことでした。
食べないか、食べるのであればより太りにくいものを、という具合です。
自分が今何を食べたいと思っているか、じっくり考えたこともありませんでした。
強いて言えば、いつでも、なんでも、食べたいからです。

体重の増減で過剰に気分が左右されることについても、なんの違和感もありませんでした。
体重が増えると、それが健康上よい値であっても、自分がとても醜く思え、恥ずかしく、落ち込んだ気持ちになりました。
人から「やせたね。」と言われることが、例えば「君はクレオパトラのように美しい。」と言われたように感じるぐらい嬉しく、興奮しました。
摂食障害にありがちな考え方や感じ方は、私にとって疑問をさしはさむ余地が無いほどに身近で当たり前のものでした。

【11】-3 摂食障害と多重嗜癖(cross addiction クロス・アディクション)

摂食障害・過食症は、食べ物や食べることに関する依存症でもあります。

依存症には、依存対象が二つ以上存在する多重嗜癖(cross addiction)という問題があります。

依存症の治療上、多重嗜癖という概念は欠くべからざるものです。

嗜癖とは、広義の依存症を指します。

アルコールや薬物などの物質だけではなく、行為、人間関係に及ぶ、「コントロール出来ない悪い習慣」が嗜癖です。

物質の嗜癖には、アルコールや薬物の摂取によるものがあり、

行為の嗜癖には、ギャンブル、セックス、暴力、自傷行為、万引き、買い物、仕事、インターネット、ゲームなどがあり、

人間関係の嗜癖には、恋愛、夫婦間暴力、家庭内暴力(思春期青年の親虐待)、虐待、いじめ、パワーハラスメントなどがあります。

人間関係の嗜癖の背景には、共依存があります。

例えば、男性から暴力を振るわれても、その男性から離れられない女性には、共依存になりやすい性質があります。
(もちろん、それで暴力を振るう側の加害者としての免責が発生するとは毛頭思いません。)

摂食障害・過食症の場合、食べ物そのものへの依存、食べ方や過食嘔吐行為、チューイングへの依存があります。

下剤や利尿剤などの薬物の誤用もあり、これも物質と行為双方にわたる嗜癖です。

摂食障害・過食症の場合も、依存症という特性上、多重嗜癖の問題を無視できません。

治療上、ひとつの依存対象だけに目を向けていると、その依存が減っても、別の依存が増えている、ということが往々にして起こります。

過食、過食嘔吐やチューイング行為がおさまっても、一方で飲酒量が増え、アルコール依存症に陥ってしまっては、元も子もありません。

摂食障害にアルコール依存症を合併する時、その死亡率は倍以上に跳ね上がります。

摂食障害・過食症を発症しているということは、上記の物質や行為、人間関係の嗜癖の共存も十分あり得るということです。

摂食障害の患者さんによく見られるくり返す万引き行為も、多重嗜癖の要素を孕むものです。

過食嘔吐をしている私は最低です。

【11】-2 摂食障害とアダルトチルドレンとしての特性 ②

摂食障害・過食症の方の多くが、アダルトチルドレンに共通した性質を持ちます。

摂食障害・過食症は食べることをコントロールできない病気で、食べ物や過食や過食嘔吐行為、チューイングに嗜癖する病気です。

アダルトチルドレンに嗜癖の問題が付きまとうことを考えれば、摂食障害の方の多くにアダルトチルドレンの特性があっても、なんの不思議もありません。

詳しくは成書にゆずりますが、アダルトチルドレンにはいくつかの特徴的な性質があります。

その性質がアダルトチルドレンを、過食や過食嘔吐行為、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存など数々の嗜癖的行動へと駆り立てます。

摂食障害・過食症に万引きを合併しやすいことは良く知られていますが、このことにもアダルトチルドレンとしての特性が深く関わっています。

【11】-2 摂食障害とアダルトチルドレンとしての特性 ①

アルコール依存症者の親がいる家族では、その子どももアルコール依存症を発症しやすいことが広く知られています。

依存症の性質は親から子へ受け継がれうるものですが、すべてが目に見える形で受け継がれるわけではありません。

アダルトチルドレンとは、もともとアルコール依存症の治療現場から発生した概念です。

アルコール依存症者の夫から離れられない妻に注目すると、その妻の多くがアルコール依存症者の娘であったという事実が最初にありました。

狭義には、アダルトチルドレンはアルコール依存症者のいる家庭で子ども時代を過ごした大人のことです。

広義には機能不全家族の中で子ども時代を過ごした大人です。

アルコール依存症のように養育者に依存症の問題があったり、あるいは病気などで養育者が健常な親として機能できない家族が機能不全家族です。

アダルトチルドレンとは、「生きづらさ」を自覚した大人がその理由をたどり、その後の人生をより豊かに生きるためのきっかけともなるもので、診断のための医学用語ではありません。

ほとんどのアダルトチルドレンの将来には、常に依存・嗜癖の問題が付きまといます。

嗜癖とは広義の依存症のことで、「わかっちゃいるけどやめられない」性質のものです。

過食、過食嘔吐、チューイング、下剤誤用、利尿剤の乱用も嗜癖の一種です。

アダルトチルドレンはアルコール依存症や摂食障害、多重嗜癖のベースとなりえます。

アダルトチルドレンとしての特性から、アルコールや薬物、ギャンブル、過食嘔吐などの嗜癖的行動をくり返し、深みにはまった時、病院・医療機関での治療が必要となります。