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拒食症 痩せて訴えるメッセージ

痩せて訴えるメッセージ

拒食症の方は、やせによって健康が損なわれていたとしても、活発にふるまうことで元気そうに見えることがあります。
明るく積極的で上手に周囲とコミュニケーションをとっているように見える場合もあります。
とてもやせていること以外、なんの問題もないように見えるのです。
患者さんは尋常ではない努力を払ってそのように見せています。
患者さんは、見た目通り、立っているのもやっとのボロボロの状態なのです。
患者さん本人に病識がなかったり、過活動などの拒食症の症状によって元気そうに見える場合もあるでしょう。

拒食症の方はその身体でもって強烈なメッセージを発信しています。
患者さん本人にその自覚はないことがほとんどです。
摂食障害の患者さんは自らの内的感情に鈍感で、寂しいか怒っているかなどの感情が自分で把握できないことがままあるからです。
言葉で自分の本来の欲求を伝えられたり、周りと真の意味でのコミュニケーションをとれる状態なら、病的にやせたりしません。
拒食症の患者さんの身体を見ると、私には彼女たちの慟哭が聞こえます。

二つの「拒食症」

拒食症は、神経性やせ症、神経性無食欲症、神経性食欲不振症ともいいます。
また、過食嘔吐などの排出行動の有無によって二つの病態に分かれます。
一つが「摂食制限型」で、もう一つが「過食・排出型」です。

拒食症は、「やせ」に伴い健康が損なわれている状態です。
つまり、体重減少によって貧血や無月経となったり、子どもの場合は成長が遅れるなど、やせによる不都合が生じています。
そして、本人はその不都合に無自覚か否定的で、やせを維持したい、もしくはさらにやせたい状態です。

やせた状態を維持するために排出行動を伴わない状態が摂食制限型の拒食症です。
嘔吐や下剤・利尿剤の誤用など排出行動を伴う状態が過食・排出型の拒食症です。

拒食症の診断

摂食制限型の拒食症は、過食嘔吐や利尿剤・下剤の誤用がみられないタイプの拒食のことです。
「拒食」という文字の印象から、拒食症と聞くとこのタイプの拒食症を連想する方が多いかもしれません。
患者さんは、やせた状態を維持するために食事制限をしています。
過食・排出型の拒食症は、やせた状態を維持するために自己誘発性嘔吐や下剤・利尿剤の誤用などの排出行動をとります。
過食・排出型の拒食症の方でも、過食エピソードの間には極端な食事制限をしている場合もあります。

意外かもしれませんが、拒食症でも食べ物や食べることに関する症状は、十人十色で非常に多彩です。
水も飲めないなど、飲み物すら口にできない方もいます。
カロリーの低い海藻や野菜のみ食べられるという方もいます。
飴玉1個でも食べた後に激しい後悔や自責の念に苛まれる、などの症状もあるでしょう。
食べ物や食べることに関して、具体的にこういう症状があれば拒食症と診断できる、というものはありません。
健康を害するほどにやせており、それを認めようとしない状態が拒食症です。
嘔吐や下剤・利尿剤の使用が無く、食べ物をセーブすることでやせている状態が摂食制限型の拒食症です。
そこに過食嘔吐や下剤・利尿剤の誤用などの排出行動が加われば、過食・排出型の拒食症です。

何を食べても何を食べていなくても、水を飲んでいても飲めなくても、拒食症の診断には関係ありません。
拒食症の重症度に関わる可能性はあります。
具体的な例を挙げましょう。
無月経になっているのにダイエットをやめられず、病院も受診せずにダイエットを続けている状態は拒食症です。

高揚しがち?摂食制限型

摂食障害は病識が欠如しやすい病気ですが、摂食制限型の拒食症の場合その傾向はより顕著です。
やせている間は、万能感や達成感、安心感が優勢となり、高揚していることが多いようです。
摂食制限型の拒食症に見られるこの状態は、双極性障害の躁状態に近いように思います。

摂食障害は、双極性障害やうつ病、パーソナリティ障害などの代表的な精神疾患によく似た症状を呈することがあります。
それらの精神疾患との併存率も高いことが知られています。

摂食制限型に多い病識の欠如

摂食制限型の拒食症は、その渦中において病識を持つことは極めて難しいことだと思います。
摂食障害はどういったタイプであれ病識を持ちにくい病気です。
食べた物を嘔吐する人でも病気である自覚がほとんどありません。
嘔吐を認めず自称ダイエットをしているだけで、病気としての自覚が生まれるはずがないのです。

事実、摂食制限型の拒食症の場合、患者さんが自ら治療のために病院を訪れることはほとんどありません。
患者さんのやせた状態を心配した家族が、医療機関を受診したり治療機関に相談するケースがほとんどです。

痩せ続ける過食・排出型

拒食における「やせへの希求」は「やせ衝動」です。
やせに伴う身体の不都合を論理的に理解したとしても、やせたい気持ちはなくなりません。
意志でコントロールできないから衝動なのです。

摂食障害には「過食衝動」、「やせ衝動」、「排出衝動」の3つの衝動があります。
これら全ての衝動がより強い状態が、過食・排出型の拒食症と思われます。
過食・排出型の拒食症では、他の摂食障害の病型と比較しても死亡率が高いことなど、転帰(病気のその後)が悪いことでも知られています。 やせている状態では身体のミネラルバランスも狂いやすく、脱水にも陥りやすいため、命の危険を伴いやすいのでしょう。
それ以外に「過食衝動」、「やせ衝動」、「排出衝動」のより強い状態は、もともとの病状が重いことを示しています。
もともとの病状の重さが転帰が悪いこととも関係しているのではないでしょうか。

摂食障害の死因として、自殺による死亡が少なくない位置を占めます。
これは、摂食障害の精神疾患としての重篤さを表していると思います。