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【20】-16 無排卵、無月経がからだに及ぼす影響・・・

 
 摂食障害・過食症・拒食症であるときに、いかに無排卵、無月経を合併しやすいのか、分かってきたかと思います。
 では、無排卵や無月経がからだにどのように害悪となるか、説明していきましょう。

 まず第一に不妊の問題があります。
 無月経の期間が長くなると妊娠する能力が失われます。
 無月経や無排卵など正常に性周期が刻まれない状態では、卵巣、子宮への血流が乏しくなります。血流不足が長くなると、萎縮・変性といって、卵巣・子宮のつくりが変わっていってしまいます。
 萎縮・変性が起こると、卵巣・子宮は本来の機能を二度と果たせなくなります。
 つまり、永続的な不妊です。

 無排卵、無月経の影響として、次に、女性ホルモン、エストロゲンが正常に働かないことによる問題が挙げられます。

 エストロゲンの分泌レベルによって、いくつか病態が考えられますが、まずはエストロゲンがメリハリ無く分泌されつづけている状態での問題について述べましょう。
 無排卵性周期症など、定期的な出血があるような状態では、プロゲステロンは不十分ながら、エストロゲンがある程度分泌されている場合があります。
 この、エストロゲンがメリハリ無く分泌されつづけている状態は、摂食障害・過食症・拒食症によっても起こりえます。
 過食によって急激に体重が増えると、脂肪組織で分泌されるエストロンが上昇し、これによって性ホルモンのバランスが崩れて排卵できなくなったり、エストロンの効果で不正性器出血が起こったり、とういことが考えられます。
 排卵できず、プロゲステロンがほとんどない状況下でエストロゲンのみに暴露されつづけると、子宮内膜増殖症、子宮体癌などエストロゲンが発症にかかわる病気の危険性が増します。
 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や無排卵性周期症では、このためにこそプロゲステロンを補充する、という治療が必要になることがあります。
 また、エストロゲンだけが中途半端に高くても、性周期に則ったエストラジオールの高まりは無いわけですから、エストロゲンの真価は発揮できていません。
 性周期に則ったエストラジオールの高まりが無いということは、女性としての魅力が充分に発揮できていないということです。
 エストラジオールは生体内で供給される女性ホルモンのなかで最も強い活性を持ち、その活性はエストロンの実に10倍とも言われています。
 エストロンは性周期を邪魔することはできても、エストラジオールが本来持つ効果を発揮することはできません。

 次は、エストロゲンが正常に働かないことによる問題のうち、エストロゲンの分泌レベルがかなり低い状態での問題点です。
 やせていて、脂肪組織からのエストロンの供給もほとんど無いと思われるとき、この状態となりやすいでしょう。
 エストロゲンの作用のひとつ、女性としての魅力を輝かせる、ということを考えると、エストロンすら不足している状態は、女性としての魅力はかなり損なわれた状態であると言わざるを得ません。
 しかしこの場合、より憂慮すべきなのは健康への悪影響です。
 エストロゲンは脂質代謝や骨代謝に影響します。
 無月経によって体内のエストロゲンがずっと低い状態が続くと、高コレステロール血症、骨粗しょう症のリスクとなります。

 無月経と高コレステロール血症の関連性に議論の余地はありませんが、無月経が糖尿病など生活習慣病、メタボリックシンドロームをより早く発症させるかどうか、はっきりとしていません。
 早発卵巣不全という状態で、糖尿病発症のリスクが上がる、という報告もあります。
 しかし、ベースに過食や過食嘔吐、過食と絶食のくり返しなど摂食障害・過食症・拒食症の症状があれば、インスリン抵抗性の上昇、高インスリン血症などの体質が加わることにもなり、摂食障害に伴う排卵障害、無月経では高脂血症、糖尿病などの生活習慣病、メタボリックシンドロームを発症しやすい、ということがかなりはっきりしています。

 骨粗しょう症のリスクとして、無月経の他に低体重があり、摂食障害があり、やせていて無月経の場合、骨粗しょう症のリスクはかなり高いと言えるでしょう。
 摂食障害・過食症・拒食症のために、やせすぎていて無月経となっている場合、長期の無月経による骨粗しょう症予防として、ピルやその他排卵を促す治療を行うケースもあるかもしれません。
 しかし、過食や絶食・節食、過食嘔吐やチューイングがある状態での著しい低体重、やせすぎの状態は、命をかけた綱渡りのようなもので、些細なことで取り返しのつかない事態の悪化を招く危険もあります。危ないバランスを保っている時ほど、いったん悪い方に傾くと、信じられないぐらいの勢いでもって崩れ去るものなのです。